両眼視差が運動透明視の知覚コストに与える影響(生体工学)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
視野上の同一領域に複数の運動を同時に知覚する現象は,運動透明視として知られている.この現象下では,知覚コストと呼ばれるパフォーマンスの低下が生じることが知られている.この要因として,MT野のポピュレーション応答が考えられている.運動透明視状況のポピュレーション応答は,各運動成分を単独で呈示したときの応答の荷重和になることから,各運動成分を検出し難くなると考えられる.このとき,運動方向差が大きいときには二つの運動成分を知覚しやすくなるという,運動方向差依存性が生じると予測される.しかし,Suzukiらは,検出いきでパフォーマンスを評価した場合は予測どおりであったが,精度を用いた場合は予測とは逆の結果になったと報告している.精度では,検出いきとは異なるメカニズムによって知覚コストが生じているのだろうか.本研究では,運動透明刺激に両眼視差を導入し,知覚コストに与える影響を心理物理学的に測定することで,その要因を検討した.視差の導入により,各運動成分に対応するポピュレーション自体が分離される.したがって,このとき各運動成分に対応する応答の重畳に起因した運動方向差依存性は生じなくなると考えられる.実験の結果,視差の導入により検出いきと精度のいずれでも知覚コストの運動方向差依存性が消失した.このことは,検出いきのみならず精度で生じる知覚コストも各運動成分に対応した応答の重畳によって生じるが,その重畳は単純な荷重和ではない可能性を示唆する.
- 2012-01-01
著者
関連論文
- 逆相関法を用いた視覚メカニズムの非線形特性の推定(視聴覚技術,ヒューマンインタフェース)
- 局所対応刺激を用いた立体透明視の知覚特性の検証
- 視覚特徴間の時間的相互作用の心理物理学的検証(研究速報)
- 音声系列の規則獲得における統計学習の影響(バイオサイバネティックス,ニューロコンピューティング)
- 音声系列の文法的規則獲得における統計学習の役割
- 視覚情報の脳内表現と知覚パフォーマンス : モデル予測とその心理物理学的検証のケーススタディー
- 統計情報を用いた音声系列の学習に関する研究
- 局所対応刺激における階層的な運動統合メカニズムの検証(バイオサイバネティックス,ニューロコンピューティング)
- ポピュレーション符号化モデルを用いた局所的および大域的運動統合メカニズムの検証(ニューラルネットワーク画像復元及び一般)
- ハイブリッド型視差エネルギーモデルを用いた立体透明視の神経回路モデル
- 同一ドットパターンを重畳したステレオグラムにおける透明面検出
- 同一ドットパターンを重畳したステレオグラムにおける透明面検出
- 視覚系における局所的及び大域的運動統合メカニズムの独立性
- 多重表面の知覚と脳内表現
- 視覚運動情報の局所的および大域的相互作用に関する考察
- 多重運動情報の脳内表現モデル(認知現象の分析とモデル化(その2))
- 時空間エネルギーモデルによる両眼視および運動視の透明面符号化
- 両眼エネルギーモデルを用いた多重視差のポピュレーション符号化モデル
- 多階層予測符号化モデルに基づくパターンの表現(バイオサイバネティックス,ニューロコンピューティング)
- 重畳運動の方向差が運動透明視の知覚コストに与える影響 (電気通信大学 IS(大学院情報システム学研究科)シンポジウム 第15回「Sensing and Perception」)
- 両眼立体視における重畳視差の知覚メカニズム (電気通信大学 IS(大学院情報システム学研究科)シンポジウム 第14回「Sensing and Perception」)
- 複数教員の多角的な指導による学生懇話会の試み(第2報)
- 運動透明視現象の脳内情報処理 (電気通信大学 IS(大学院情報システム学研究科)シンポジウム 第10回「Sensing and Perception」)
- オクルージョン手がかりを用いた両眼視による構造復元モデル
- 多階層予測符号化モデルに基づく高次パターン認識
- 心理物理学的逆相関法による脳内メカニズムの非線形特性分析手法
- マスキングされた視覚探索課題による人のパターン認識特性の検証(視聴覚技術,ヒューマンインタフェース)
- 区分線形性を考慮したニューロン応答特性の分析手法
- 任意の刺激分布を用いた心理物理学的な知覚判断特性の推定
- 統計情報による連続音性系列の規則獲得についての一考察 (電気通信大学 IS(大学院情報システム学研究科)シンポジウム 第16回「Sensing and Perception」)
- 両眼視差が運動透明視の知覚コストに与える影響(生体工学)
- 逆相関法を用いた周辺色の影響による知覚色変化の分析(視聴覚技術,ヒューマンインタフェースおよび一般)
- 逆相関法を用いた周辺色の影響による知覚色変化の分析
- 階層ベイズモデルによる複雑型細胞の偶対称な応答特性の獲得
- 空間・形状情報の統合と視覚統計学習
- 運動知覚における脳内の適応的な計算メカニズムに関する研究
- カーネル関数を用いた教師なし学習によるスパース表現の獲得