波長分散型蛍光X線分析による臭素試験法を応用したトマト、メロン、しょうが、葉しょうが、みょうがおよびくり中のヨウ素スクリーニング
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概要
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ヨウ化メチルは、2009年9月にMRLが設定された燻蒸殺虫剤であり、臭化メチルとは農薬の一つとして類似の使われ方をされることから、その代替品として広く使用され、日本では食品衛生法により農産物中の残留量が厳しく規制されている。一方、臭化メチルは、日本では臭素としての残留量が規制されており、その監視に臭素の分析が行われている。そこで、この臭素の分析に併せ、ヨウ化メチルの残留を判断できれば、分析の効率化が図れる。しかし、臭素とヨウ化メチルは、揮発性や反応性などの性質が大きく異なっており、同時分析は不可能であった。ヨウ化メチルは米国及びオーストラリアでは土壌燻蒸剤として使用した場合、作物に残留しないことから、MRLが設定されておらず、国内で実施された作物残留試験においてもLOQ(0.01 ppm)未満であったが、その分解物であるヨウ素は検出されている。また、直接燻蒸を行う栗についてはヨウ化メチルが検出されており、さらにヨウ素はヨウ化メチルよりも多く検出されている。そこで、ヨウ化メチル残留の有無を、分解物であるヨウ素を測定することで簡易にスクリーニングする方法を検討した。分析には波長分散型蛍光X線分析装置(WDXRF)を用いた臭素の分析法を応用し、ヨウ素との同時分析をすることとした。試料からヨウ素及び臭素の化合物を蒸留水で抽出し、糖分が多い試料の抽出液はPSAミニカラムを用いて精製した。試料抽出液の一部を点滴用ろ紙上で乾燥し、WDXRFを用いてヨウ素及び臭素を測定した。農作物にヨウ素として5.0μg/gとなるように添加したときの回収率は、70〜98%、変動係数は2.0〜6.9%であり、検出下限は0.7μg/g、定量下限は2.2μg/gであった。一般に農作物中のヨウ素は0.5μg/g以下であることから、本法の検出下限以上のヨウ素が検出された場合、ヨウ素の親化合物であるヨウ化メチルが使用され、残留している可能性があると考えられた。また、農作物に臭素として5.0μg/gとなるように添加したときの回収率は76〜102%、変動係数は0.6〜8.6%であり、検出下限は0.4μg/g、定量下限は1.3μg/gであった。今回、各種農作物について5.0μg/gを添加した回収実験ではヨウ素及び臭素について十分な回収率が得られることが判明したが、ヨウ化メチルのMRLが設定されておらず一律基準(0.01ppm)が適用された場合は、本法を用いてのヨウ素としての分析結果からでは残留ヨウ化メチルの確認が難しい。そこで、現在までに作物残留試験により残留形態が判明しており、現在基準値が0.05〜0.5ppmで設定されているトマト、メロン、しょうが、葉しょうが、みょうがおよびくりのヨウ素についてはスクリーニング検査が可能であると考えられた。したがって、本法は、臭素の定量分析と同時に、農作物は限定されるが残留ヨウ化メチルの有無を分解物であるヨウ素から推定するためのスクリーニング検査に利用できると考えられた。
- 2013-04-22
著者
-
酒井 奈穂子
東京都健康安全研究センター
-
永山 敏廣
東京都健康安全研究センター
-
立石 恭也
東京都健康安全研究センター
-
橋本 常生
東京都健康安全研究センター
-
牛山 慶子
東京都健康安全研究センター
-
馬場 糸子
東京都健康安全研究センター
-
高野 伊知郎
東京都健康安全研究セ
-
永山 敏廣
東京都健康安全研セ
-
八巻 ゆみこ
東京都健康安全研究センター
-
立石 恭也
東京都衛研
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