桜島火山における楕円近似による火山灰堆積量の推定法について(<特集>桜島火山)
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概要
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海に囲まれた火山島では観測できる場所が限られ,火山灰の堆積量を推定することが困難であった.また,火山灰が大量に降ることによって交通,健康,農作物へ影響を生じ,厚く堆積した斜面では土石流が発生しやすくなる.ゆえに火山灰の降下量(降灰量)や分布を迅速に把握する方法の開発は,火山学,防災学上の重要な研究対象となる.このため桜島のように海に囲まれ観測場所が限られる火山での迅速かつより少ない点から火山灰の堆積分布・量を推定する方法を検討した.我々は等層厚線が相似の楕円に近似されると仮定し,各点から得られる楕円近似した等層厚線の軸比を一定とし,分布を幾何学的に単純化した.また,降灰観測データの豊富な噴火事例を検証した結果,面積=層厚がA=αT^d(T:層厚,A:面積)とした場合,その減衰はほぼ-1乗に近似可能である.これらの関係より,火口位置などを楕円の軸端点とし,火山灰堆積分布に相当する分布軸が決められる場合,計算上2点の観測値から火山灰堆積量を推定することが可能となる.ただし,本手法では通常,計算軸を求める際に,計算に使用する2点以外の1〜4点程度の複数観測点の値が必要となる.本手法については分布軸が精度良く求められることと,複数の観測値を解析結果が矛盾なく説明できることを適応条件とした.本手法を用い桜島2008年の活動について60を超える噴火の火山灰堆積量を推定した.推定した分布から特定の場所における月ごとの累積降灰量を計算した結果は観測量を再現可能である.2008年の桜島の活動を日単位の堆積量として解析すると,ピークは5月6〜23日頃であったと推定される.本方法を適応することによって,これまで観測が難しかった火山島での火山灰堆積量観測が可能となる.
- 2013-03-29
著者
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山越 隆雄
独立行政法人土木研究所
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田島 靖久
日本工営株式会社国土保全部
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田村 圭司
独立行政法人 土木研究所 土砂管理研究グループ 火山・土石流チーム
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津根 明
桜島ミュージアム
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鶴本 慎治郎
国土交通省大隅河川国道事務所
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山越 隆雄
独立行政法人土木研究所土砂管理研究グループ
-
津根 明
Deep Ocean Resources Development Company, Ltd.
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田村 圭司
Public Works Research Institute:Sabo and Landslide Technical Center
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山越 隆雄
Public Works Research Institute
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田島 靖久
Nippon Koei Co., Ltd.
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鶴本 慎治郎
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism, Osumi Office of River and National Highway
-
鶴本 慎治郎
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism, Osumi Office of River and National Highway:Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism, Miyazaki Office of River and National Highway
-
田村 圭司
Public Works Research Institute
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