後天性血友病A:第VIII因子インヒビター
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概要
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凝固第VIII因子に対する自己抗体に伴う出血傾向は後天性血友病Aとして知られている。発生頻度は0.5〜1人/100万人と稀で、20〜30歳と60〜80歳に多い。基礎疾患としては自己免疫疾患、悪性腫瘍があり、妊娠や薬剤使用に伴うこともある。高齢者では基礎疾患を伴わないものが多い。,臨床症状は皮下出血、筋肉内出血、消化管出血、中枢神経系出血などであるが、先天性血友病と比べて関節内出血は多くない。重症の出血症状が約80%で認められ、出血による死亡は約20%とされている。,血液検査ではAPTTの延長を認めるがPTは正常である。第VIII因子活性低下を認め、第VIII因子インヒビターが陽性である。,治療としては、急性出血に対して抗体価が低力価の場合第VIII因子製剤を投与するが、無効例や抗体価が低力価でない場合には、活性化プロトロンビン複合体製剤、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤によるバイパス療法が行われる。,慢性期には抗体産生を抑制する目的で免疫抑制療法が行われる。ステロイド、シクロホスファミドが用いられるが、しばしば再発がみられ、維持療法を必要とすることが多い。第VIII因子濃縮製剤-CVP療法(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン)は寛解率が高く、寛解例では再発の報告はなく注目されるが、第VIII因子製剤併用の有用性はまだ明らかとはいえない。リツキシマブも有効であるが、単独使用の報告は少なく再発例もあり、また保険適応にはなっていない。,出血傾向の既往がない患者で、急激に重症の出血傾向を認めた場合には、後天性インヒビターを疑い、早期に診断・治療を進めることが重要である。
- 2013-03-31
著者
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