敬語研究と実時間的言語変化研究との接点を求めて(<特集>敬語研究のフロンティア)
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概要
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本稿は,変異理論に基づいた実時間的言語変化研究が敬語研究にもたらす新たな可能性を,関連分野の研究動向を踏まえながら展望するものである.敬語は,国語学,日本語学,社会言語学を始めとする諸分野において,さまざまな視点や方法による調査研究がなされてきた.本稿では,敬語研究の状況をより包括的に捉えるために,(1)文法的アプローチ,(2)社会心理学的アプローチ,(3)社会言語学的アプローチ,(4)言語社会学的アプローチという4つの枠組みを設けた.敬語研究の動向を概観すると,国語学による敬語史研究や文法化理論を適用した研究などの通時的研究と,敬語の使用実態や意識に関する調査研究,ポライトネス理論を応用した研究などの共時的研究とが並立的になされてきた.双方の研究成果が蓄積されると,両者を有機的に関連付ける視点が必要となる.本稿では,将来的な変化予測を含めた敬語変化を捉えるために,通時的視点と共時的視点を統合した視点を設け,実時間的敬語変化研究について考察を試みた.その結果,国立国語研究所が愛知県岡崎市で過去二回実施した敬語調査(岡崎調査)が,この統合的視点による唯一の実時間的敬語変化研究であることを示した.統合的視点による研究は,文法論,語用論,社会心理学などの関連分野からの解明が糾合されることが前提となる.国立国語研究所が三回目の調査を予定している岡崎調査の成果によって,その積極的な意義が証明されることを指摘した.
- 2008-08-31
著者
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