理科授業の話し合いにおける科学的概念の協同構成 : 比喩表現のアプロプリエーション(借用/領有)に注目して
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概要
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本研究の目的は,森本・瀧口・八嶋(1999)による科学的概念の深化に関する研究をふまえて,理科授業の話し合い場面で子どもたちが比喩表現の意味要素(semantics)を変化させながら科学認識を協同的に構成していく過程を明らかにし,教師の適切な支援を可能にする実践的示唆を得ることである。そのために,本研究では,子どもたちがお互いの発言にある表現を借用/領有する「アプロプリエーション」という活動に焦点を当てた。分析の対象は,小学校6年生の学級で行われた人体に関する単元の授業である。観察記録から話し合い場面の発話データを起こし,Lemkeの分析を参照しながら比喩表現の意味要素を同定した。そのうえで,各発言によってどのように意味要素が変化するかについて分析した。結論は以下の3点である。第一に,話し合いの中で子どもたちの発言にある比喩表現は,アプロプリエーションを通して意味要素が変化していた。第二に,個々の子どもは比喩表現のアプロプリエーションを通して,自らの科学認識を深化させていた。第三に,教師がこうした比喩表現を積極的に利用して話し合いを組織している可能性が示唆された。
- 2011-03-10
著者
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