三河湾の浚渫窪地における粒子状物質の特異的な集積機構
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概要
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顕著な貧酸素水の発生源となり周辺の浅場生態系に致命的な打撃を与えている, 埋め立て用土砂採取跡地(浚渫窪地)およびその周辺海域における酸素の消費過程を解明するため, 主たる酸素消費物質である粒子状物質の沈降フラックスを測定した。2007年6月から2007年7月の間に計4回, 浚渫窪地の内外の3測点において, 浚渫窪地上面(CDL-3.5m)と浚渫窪地海底(CDL-6.9, -6.4m)に相当する深度にセディメントトラップを設置した。懸濁態炭素の沈降フラックス(PC flux)は, 0.35〜15.3gm^<-2>d^<-1>と観測日により大きく変動し, 膨大なPC flux(9.48〜15.3gm^<-2>d^<-1>)が-6.9, -6.4m層で観測された。膨大なPC fluxの観測時には, 浚渫窪地周辺の浅海域において, 浚渫窪地から湧昇した貧酸素水に起因すると推察される底生生物の大量へい死と, そこから浚渫窪地内部への海水流入が認められた。観測されたPC fluxを上方からの沈降成分と, 水平輸送に由来する成分へ仕分けた結果, 膨大なPC fluxの観測時, 水平輸送成分は, 多いときには上方からの沈降成分の7〜11倍に相当した。これらのことから, 浚渫窪地周辺の浅海域での底生生物の大量へい死に伴い激増した粒子状物質が, 海水の流動によって浚渫窪地に輸送された結果, 膨大なPC fluxがもたらされたと考えられた。このように, 浚渫窪地は, 窪地内部の貧酸素水に起因する周辺浅海域の底生生物のへい死を招き, 浚渫窪地へ膨大な量の粒子状有機物の集積を引き起こし, 貧酸素化を加速すると示唆された。
- 2011-01-05
著者
-
鈴木 輝明
愛知県水産試験場
-
和久 光靖
愛知県水産試験場
-
向井 良吉
愛知県水産試験場
-
青山 裕晃
愛知県西三河農林水産事務所
-
石田 基雄
愛知県水産試験場
-
金子 健司
(株)日本海洋生物研究所
-
金子 健司
株式会社日本海洋生物研究所
-
鈴木 輝明
愛知県水産試験場漁場環境研究部
-
石田 基雄
愛知水試
-
橋口 晴穂
株式会社日本海洋生物研究所中部支店
-
宮向 智興
株式会社日本海洋生物研究所中部支店
-
青山 裕晃
愛知県水産試験場
-
青山 裕晃
愛知水試
-
金子 健司
株式会社日本海洋生物研究所中部支店
-
鈴木 輝明
愛知県水試
-
鈴木 輝明
愛知県水産試験場:(現)愛知県水産試験場漁業生産研究所
-
橋口 晴穂
(株)日本海洋生物研究所中部支店
-
栗田 貴代
(株)日本海洋生物研究所中部支店
-
宮向 智興
(株)日本海洋生物研究所中部支店
-
和久 光靖
愛知県水産試験場漁場環境研究部漁場改善グループ
-
鈴木 輝明
愛知県水産試験場:名城大学総合学術研究科
-
向井 良吉
愛知県水産試験場:愛知県農林水産部水産課
-
栗田 貴代
(株)日本海洋生物研究所 中部支店
-
橋口 晴穂
(株)日本海洋生物研究所 中部支店
-
宮向 智興
(株)日本海洋生物研究所 中部支店
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