類白血病反応を呈し難治性に経過した深頸部膿瘍の1例
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概要
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われわれは、類白血病反応を呈した稀な頸部膿瘍の一例を報告する。2週間続く発熱、頸部腫張にて当院を受診した86歳の男性で、初診時に右頸部に周囲と硬く癒着し発赤を伴う有痛性の腫瘤を認めた。血液検査結果は白血球数 43500/ml(骨髄球0.5%、桿状核球 12.5%、分葉核球 40.0%、単球35.5%、リンパ球 11.0%、異型リンパ球 0.5%)、赤血球数 302×104/ml、Hb 5.8g/dl、Ht 19.3%、CRP 9.43mg/dlで、造影CTにて右頸部に径5cmの膿瘍形成を認めた。高度な貧血を伴う頸部膿瘍と診断し、膿瘍を穿刺排膿した。白血病や悪性腫瘍の合併を考慮し、膿瘍内容液を培養同定と細胞診に提出した。抗菌薬(CTRX)、プレドニゾロン、免疫グロブリン、濃厚赤血球輸血で治療を開始し、白血球数は5日目に6000/mlと正常化した。末梢血中に、治療開始4日目にみられた骨髄球3%と後骨髄球1%をピークに10日目まで幼若球の出現を認めたが、その後消失した。頸部の所見は、3日目に膿瘍が3つの瘻孔を形成して自壊した後、血液検査所見の改善に反して膿瘍は縮小しなかった。1日目に提出した細胞診の結果は炎症性変化のみでClass I、細菌培養ではStaphylococcus aureus 3+が同定された。多発性の瘻孔を形成したため、結核や放線菌症を疑い、自潰部から一般細菌検査、結核菌検査、放線菌培養を追加施行したが、どの検査においても菌は検出されなかった。8日目に抗菌薬をABPCに変更した後から膿瘍の縮小がみられ、入院21日目に軽快退院となった。本例は,膿瘍穿刺検体からアクチノミセスは検出されていないが、頸部所見の臨床的特徴と経過から頸部放線菌症であった可能性が示唆された。また、輸血と頸部膿瘍への治療のみで血液像が正常化したことから、当初の白血球増多は頸部膿瘍に伴う類白血病反応と考えられた。
- 2010-07-25
著者
-
濱田 真史
東京女子医科大学東医療センター卒後臨床研修センター
-
余田 敬子
東京女子医科大学東医療センター耳鼻咽喉科
-
川内 喜代隆
東京女子医科大学東医療センター内科
-
余田 敬子
東京女子医科大学
-
川内 喜代隆
東京女子医大・東医療センター内科
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