播磨灘における全窒素濃度の季節変動と窒素の形態変化

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近年,窒素不足によるノリの色落ち(色調低下)によって東部瀬戸内海における主要産業の一つであるノリ養殖業が大きな損害を受けており,溶存態無機窒素濃度の変動機構の解明が急がれている.本報では,播磨灘の表・中・底層における粒状態有機窒素(PON),溶存態全窒素(TDN)および溶存態無機窒素(DIN)の濃度を季節を通じて測定し,窒素濃度の季節変化を形態別に調べた.PON濃度は春季から秋季にかけて上昇し,秋季から初冬にかけて低下するが1月以降にやや上昇し,春季に再び低くなる.TDN濃度は春季に最も低く,夏季にやや上昇するが秋季から冬季の間はほぼ一定で推移し,その後春季に向けて低下する季節変動を示した.TDN濃度・PON濃度を合計した全窒素(TN)の濃度は,河川流量の比較的多い初夏から夏季にかけて上昇し,冬季から春季にかけて低下した.これらの変動は表・中・底層に共通していた.DIN濃度は全層で春季に最も低く,下層では夏季に,上層では秋季に上昇しはじめて両者ともに初冬に最大となり,その後冬季から春季にかけて全層で低下する明瞭な季節変動を示した.初夏から夏季にかけての河川からのDIN供給は,海域表層のDIN濃度の変動には直接影響しないが,PONの増加を通じて海域のTN現存量を増加させる.生成したPONの一部は沈降過程で無機化されて下層のDIN濃度を上昇させる.また下層では底泥からの溶出もDIN濃度上昇の要因となっていると考えられる.秋季から初冬には夏季に下層に蓄積されたDINが上層に供給されるとともに日射量の低下によって植物プランクトンの増殖が制限され,DINの消費速度が生成・供給速度を下回ってDIN濃度が上昇する.1月に日射量が増加に転じると植物プランクトンによる栄養塩の取り込みによってDINがPONになる過程が進み,さらに粒状化した窒素の一部が沈降・流出して系外へと移出することにより,冬季から春季にかけてDIN濃度およびTN濃度は全層で低下していくと考えられる.以上のようなTN濃度の季節変動と系内における窒素の形態変化が,DIN濃度の季節変動を起こしていると考えられた.
2009-08-31

播磨灘における全窒素濃度の季節変動と窒素の形態変化

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