橘湾および有明海湾口部の砂質干潟に生息するハルマンスナモグリ(十脚甲殻類スナモグリ科)・イボキサゴ(腹足類ニシキウズガイ科)幼生の輸送(シンポジウム:海洋生物の漂流-沿岸からの輸送と生態-)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1979年以来,西九州,天草下島の富岡湾にある砂質干潟のベントス群集では,最優占種であるハルマンスナモグリとイボキサゴの個体群が相反する消長関係にあった.イボキサゴ個体群は1986年に絶滅したが,1997年以来復活してきた.両種個体群の経年変化には,浮遊幼生の輸送を介した局所個体群間の連結性が関わっていたと考えられる.両種の局所個体群は,富岡湾を支湾として包含する橘湾から有明海の湾口部側1/3にかけての海域に点在している.ハルマンスナモグリ個体群間の連結性は数値モデルによりすでに推定されている.富岡湾干潟のイボキサゴ個体群の復活は天草下島の東海岸の干潟(有明海内)から放出された幼生の移入に負っていたが,その輸送過程は不明であった.イボキサゴの繁殖期は10-11月である.幼生は平均50%が海面から水深5mまでの水柱に分布し,浮遊期間は3.5-21日間であった.GPS携帯電話搭載の漂流ブイの放流・漂流ハガキの放流・海底直上に設置したADCPによる流速測定から成る現地観測により,天草下島の東海岸から放出された幼生は,凪のとき引き潮によって速やかに橘湾南部に運ばれ,富岡湾の北方沖合に数潮汐滞留し,さらに9日以内に滞留場所から富岡湾干潟まで北風による吹送流で運ばれる可能性があることが示された.
- 2009-02-27
著者
-
玉置 昭夫
長崎大学水産学部
-
万田 敦昌
長崎大学大学院 生産科学研究科
-
万田 敦昌
長崎大学水産学部
-
大橋 智志
長崎県総合水産試験場
-
Mandal Sumit
長崎大学大学院生産科学研究科
-
浜口 昌巳
水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所
-
浜口 昌巳
(独)水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所生産環境部藻場・干潟環境研究室
-
浜口 昌巳
水産総合研究セ 瀬戸内海区水研
-
浜口 昌巳
(独)水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所生産環境部
関連論文
- 瀬戸内海の各灘における藻場・干潟分布特性と主要魚種漁獲量との関係
- 諫早湾奥部締め切り後の有明海潮下帯ヨコエビ群集構造の変化
- 橘湾および有明海湾口部の砂質干潟に生息するハルマンスナモグリ(十脚甲殻類スナモグリ科)・イボキサゴ(腹足類ニシキウズガイ科)幼生の輸送(シンポジウム:海洋生物の漂流-沿岸からの輸送と生態-)
- 有明海中央部における物質輸送過程の季節変動
- 西九州, 橘湾・有明海におけるハルマンスナモグリ幼生の干潟個体群間受給ネットワークの数値モデルによる解析
- 27. DNA解析と船舶調査によるコウロエンカワヒバリガイの移入経路の解明(日本貝類学会平成19年度大会(豊橋)研究発表要旨)
- 富岡干潟におけるハルマンスナモグリ幼生の回帰戦略の数値モデルによる解析
- 砂質干潟に生息するハルマンスナモグリ個体群に対するアカエイ捕食圧の推定(第4回MRI(Marine Research Institute)シンポジウム「Marine ecophysiology」)
- 潮流シミュレーションを用いた航海への潮流の影響の調査について
- ニホンスナモグリ幼生の分散と回帰 (予報)
- 東シナ海陸棚縁辺域における海洋構造の時空的・空間的変動
- 東シナ海陸棚縁周辺における陸棚斜面水の湧昇
- 東シナ海大陸棚縁辺部の密度躍層付近における短周期の流速変動と斜面を横切る流れ
- 東シナ海黒潮前線におけるADCP連続観測結果とそれに適用した潮流分離手法について
- 東京湾人工渚におけるアサリ(Ruditapes philippinarum A. adames et reeve.)の個体群動態(第35回大会)
- 瀬戸内海・広島湾のガラモ場の植生と環境特性
- アサリ等海産ベントスの初期生態研究推進のための技術開発
- 室内飼育に基づくニシキウズガイ科腹足類イボキサゴの胚・幼生発生の記載
- 有明海の砂質干潟における植物プランクトン食ギルドのなかの二枚貝資源 : 環境収容力制限仮説の提示
- 日本国内におけるアサリ Ruditapes philippinarum の Perkinsus 原虫の感染状況
- 輸入アサリの放流によって生じる問題について
- 貝類における磁鉄鉱形成の分子機構 (総特集 生物がつくる鉱物--バイオミネラリゼーション研究の新展開)
- 内湾・内海域におけるベントス幼生の分散・回帰:東京湾におけるアサリを例に (日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同シンポジウム プランクトン研究とベントス研究のフロンティア)
- 東京湾におけるアサリ浮遊幼生の分散--調査手法と大規模調査結果の解説 (特集 海産無脊椎動物の幼生)
- 対馬海峡南西の福江島における水温の低周波変動(Journal of Oceanography Vol.56(2000))
- 福江島における水温変動について
- 周防灘南西部における貧酸素水塊の数値モデル
- 有毒渦鞭毛藻 Alexandrium tamarense 個体群のマイクロサテライトマーカーによる多型解析
- 有明海の重力循環流の季節変動
- 東シナ海における黒潮前線周辺の水塊分布および流動構造の時空間変動
- 八代海における高潮の発生要因 : 台風9119号と9918号との比較
- 有明海エスチャリーの砂質干潟におけるニホンスナモグリ個体群の爆発的分布拡大 - なぜ浮遊幼生期を研究対象とするに至ったか
- サテライトシンポジウム『第1回国際アサリシンポジウム-資源増殖と管理-』参加記
- 第1回国際アサリシンポジウム : 資源増殖と管理(第5回世界水産学会議-1)
- 陸-海相互作用系における藻場の役割
- 中海・本庄工区におけるアサリの成長と生残に及ぼす潮通しの効果
- 有明海潮下帯の底質区分とヨコエビ群集 : 1997年と2002年の比較
- 長崎県におけるアワビ種苗生産の現状と課題 (総特集 アワビ類栽培漁業--検証と今後の展望)
- タイラギ浮遊幼生および着底稚貝の飼育(予報)
- 対馬西岸におけるサザエの生殖年周期
- ミトコンドリアおよびマイクロサテライトDNAマーカーによるアサリ集団の遺伝的多様性評価の現状と問題点(シンポジウム-水産増養殖における遺伝資源の利用と保全のあり方を考える-,海洋生物育種工学研究会,関連行事-2)
- 内湾・内海域における生態系保全および持続的生産のための浮遊幼生動態調査
- アサリ浮遊幼生の分散と着底
- 本邦沿岸のアサリ資源の減少とその原因解明に向けた取り組み
- 三河湾におけるアサリ浮遊幼生の時空間分布 : 間接蛍光抗体法を用いた解析の試み
- 一次生産の変化と有用種の関係(二枚貝)
- クマサルボウガイ浮遊幼生の成長, 生残に対するマガキ卵磨砕物の添加効果
- 輸入アサリの迅速判別法を開発
- 新たな調査手法開発によるメタ個体群動態解明 (総特集 沿岸生態系の保全・再生)
- ブリ貪食細胞のPasteurella piscicidaに対する細胞内殺菌能測定法の検討
- 二枚貝生産の場としての浅場の機能と保全・再生戦略 (特集 瀬戸内海--観光資源と浅場環境の再評価とその長期的活用戦略)
- 広島湾の海岸の変遷と干潟・藻場--特にあさりなど二枚貝類資源の回復に向けて
- 秋季東京湾におけるアサリ(Ruditapes philippinarum)浮遊幼生の出現密度の時空間変動
- 夏季東京湾におけるアサリ(Ruditapes philippinarum)浮遊幼生の出現密度の時空間変動
- 干潟
- 「中海水産振興シンポジウム2008」参加報告
- 河口域周辺の流れと密度場(シンポジウム:陸と海の相互作用-海は陸にどのように依存しているか?-)
- 砂質干潟ベントス個体群・群集の安定性--とくにスナモグリ類(甲殻十脚目)・貝類に関連して(予報) (総特集 有明海の環境と生物生産)
- Application of a Nonlinear and Non-Gaussian Sequential Estimation
- 有明海エスチャリの砂質干潟におけるベントス群集の動態 : 漁業・非漁業資源のバイオマス転換の観点から(第3回MRI(Marine Research Institute)シンポジウム「Marine ecophysiology」)
- ニホンスナモグリ幼稚体による成体の巣穴利用 : 巣型による証拠
- 干潟におけるベントスの種間関係および群集研究の現状
- 簡略化されたエル・ニーニョ模型の示す非正規性(海洋・海域(1),一般講演)
- バイオターベーションとメタ個体群動態からみた干潟ベントス群集の保全と再生 (総特集 沿岸生態系の保全・再生)
- ベントスに関すること-とくにアサリ漁獲量激減に関連して
- 有明海エスチャリの砂質干潟におけるスナモグリ類,巻貝,二枚貝 : 個体群の爆発的増大と凋落をもたらす共通要因の追究(第5回MRI(Marine Research Institute)シンポジウム)
- 転石潮間帯に生息するスナモグリNihonotrypaea petaluraの生息環境特性と巣穴形態(第4回MRI(Marine Research Institute)シンポジウム「Marine ecophysiology」)
- 菌類の繁殖生態に関わる節足動物の機能と生態 研究集会報告 4 砂質干潟ベントス群集の再構築:メソスケールの動態
- 近年,有明海の砂質干潟で個体群爆発を起こしているスナモグリ類2種の動態解明に向けて一生理生態学的研究の必要性(シンポジウム「Marine Ecophysiology)
- 砂質干潟ベントス群集の20年--群集変遷は種間関係とメタ個体群動態によっていかに駆動されてきたか?(予報) (特集 干潟は,いま…)
- 中海本庄工区のベントス類調査の結果の概要
- これからのプランクトン研究をどうするか-ベントス(底生無脊椎動物)生態学の視点から
- 垂下飼育による夏季のアサリ大量へい死対策
- 台風が諌早湾小長井町地先の造成アサリ漁場に及ぼした影響
- タイラギ浮遊幼生および着底稚貝の飼育(予報)
- 有明海における卵稚仔輸送過程の数値モデル
- 沿岸資源の持続的利用のための里海と海洋保護区
- 内湾・内海域におけるベントス幼生の分散・回帰 : 東京湾におけるアサリを例に
- 2011年秋季の瀬戸内海におけるアイゴによる藻場への食害状況 : 特にアマモ場について, 食害の程度と群落衰退との関係
- 2013年度日本海洋学会秋季大会特別セッション「新たな学際的視点としての大気海洋相互作用-海洋からの影響/海洋への影響-」の開催報告
- 一次生産の変化と有用種の関係(二枚貝)