室内飼育に基づくニシキウズガイ科腹足類イボキサゴの胚・幼生発生の記載
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概要
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2002年10月,熊本県天草下島の富岡湾砂質干潟より採集されたイボキサゴに人工刺激を施し,放卵・放精を誘発した。これより得られた胚と幼生を濾過海水中(水温22.6〜25.1℃)で飼育し,発生段階ごとに形態を記載した。受精卵の直径は170μmであり,卵黄膜とゼラチン層に被われていた。トロコフォア幼生は受精後6時間で孵化し,8時間後に面盤が完成したベリジャー幼生になった。受精48時間後,幼生は基質上での匍匐と水柱での遊泳を繰り返すようになった。受精200時間後,幼生は変態して面盤を失い,殻幅200μmの幼稚体になった。この変態は,成貝が棲む底質を与え,海水を攪拌することによって誘起された。同属2種の幼生が変態までに要する時間は,本イボキサゴ幼生のそれよりも短い(サラサキサゴ-水温28〜30℃下で48時間;ダンベイキサゴ-水温20℃下で3日間)。本研究では,より適切な刺激が与えられなかったために変態の遅延が起こった可能性がある。
- 日本貝類学会の論文
- 2005-01-31
著者
-
玉置 昭夫
長崎大学水産学部
-
大橋 智志
長崎県総合水産試験場
-
原田 和幸
Marine Research Institute Nagasaki University
-
大橋 智志
Nagasaki Prefectural Institute of Fisheries
-
藤井 明彦
Nagasaki Prefectural Institute of Fisheries
-
玉置 昭夫
Marine Research Institute, Nagasaki University
-
藤井 明彦
長崎県総合水産試験場
-
玉置 昭夫
Marine Research Institute Nagasaki University
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