富岡干潟におけるハルマンスナモグリ幼生の回帰戦略の数値モデルによる解析

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熊本県天草下島北西部の砂質干潟である富岡干潟から放出されたハルマンスナモグリ幼生はデカポディッド幼生に成長すると富岡干潟への回帰し底棲生活に移行する。しかし,どのような過程でハルマンスナモグリ幼生の回帰が行われているかは明らかになっていない。本研究の目的はハルマンスナモグリ幼生の富岡干潟への回帰に対する周辺海域の物理場の役割を明らかにすることである。本研究では,富岡干潟周辺海域の8月の平均的な流動場を数値モデルで計算し,幼生の移動追跡計算をおこなった。流速場と幼生の鉛直分布について5つの条件を設定し,その結果を考察した。ハルマンスナモグリ幼生は大潮下げ潮時に富岡干潟から放出された後,潮流の水平シアーにより分布域を広げる。ハルマンスナモグリ幼生は,幼生段階初期において上層に分布する時間が長いので,対象海域の表層に存在する残差循環流によって橘湾中央部に分布する。また,幼生段階後期には底棲生活に移行し始めるので,残差循環流の影響は弱くなる。デカポディッド期に至ったハルマンスナモグリ幼生は,上げ潮流によって富岡干潟へ回帰することが明らかとなった。ハルマンスナモグリ幼生は接餌率を上げる必要がある。ハルマンスナモグリ幼生は潮流に乗って分布域を広げることにより,接餌率を上げることがわかった。ハルマンスナモグリ幼生の放出場所は成体となったハルマンスナモグリの快適な生息域となる。ハルマンスナモグリ幼生は,その放出場所である富岡干潟の近くに存在する残差循環流によって,放出場所の近くに分布することができる。このことが,彼らを再び放出場所に回帰することを容易にしている。またハルマンスナモグリ幼生が行う日周鉛直移動が,回帰率を上げる効果があることが判明した。
2004-07-05

富岡干潟におけるハルマンスナモグリ幼生の回帰戦略の数値モデルによる解析

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