育児中の在日ブラジル人の生活の特徴と社会文化的背景

概要

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本研究は,育児中の在日ブラジル人の生活の特徴と社会文化的背景を明らかにし,保健医療従事者が育児中の在日ブラジル人女性とその家族のライフスタイルや価値観に合致した援助を提供するための一助とすることを目的にした。育児中の在日ブラジル人女性29名とその家族へのインタビューとブラジル人集住地における参加観察,および文献調査によりデータを収集した。ブラジル人は,日本社会が来日前に期待していたものとは異なっていることに戸惑い,いつかはブラジルに帰国したいとの思いを抱きつつ生活していた。出稼ぎ目的で来日しても思い通りには貯蓄ができずに滞在は長期化・反復化し,日本とブラジルの両国において不安定な生活を強いられていた。ブラジル人同士の人間関係は,家族・親族との結びつきが強い反面,家族・親族以外の者との結びつきは比較的希薄であった。ブラジル人は集団的な人間関係よりも個人的な人間関係を,また自宅に人が訪問することを好む傾向があった。ブラジル人のソーシャルネットワークにおいては,託児,送迎,通訳などをする者がいるが,これは相互扶助というよりも営利目的によるものであった。