育児中の在日ブラジル人女性の日本の母子保健医療に対する認識とその背景 : 日本の母子保健医療の課題に関する考察:第3報
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
今日,地球規模での人の流れの活発化と日本社会の少子高齢化による単純労働力の不足を背景に,国内の外国人人口は増加の一途をたどっている。経済目的で来日する人々の多くが生殖年齢にあることから,日本で妊娠,出産,育児をする人々も増加しつつある。育児中の在日ブラジル人女性の日本の母子保健医療に対する認識と,その認識にかかわる社会文化的背景を明らかにすることを目的として,在日ブラジル人女性29名とその家族,7名の医療通訳者,13名の看護職者へのインタビューと産科診療所での参加観察による調査により得られた結果のうち,本稿では,否定的に認識されていた事柄である「避妊方法」「小児救急医療体制」「疼痛管理」について記述した。わが国ではブラジルに比し避妊方法が限られており,人工妊娠中絶が一般的であることを,ブラジル人女性らは疑問視していた。その根底には,母国ブラジルでは人工妊娠中絶が法律上も宗教上も禁じられていること,母国ではより多くの近代的避妊方法が利用可能であることがあった。ブラジル人女性らは,言語の障壁や情報が限られているなかで,子どもの急病時の対応に大きな不安を抱いていた。母国で都市部に居住する中産階級に属していたブラジル人は,民間保険や自費支払いでは常にかかりつけ医に相談できる体制であったことと比較して,日本の小児救急医療体制に不満や疑問を抱いていた。疼痛管理においては,麻酔や鎮痛薬が十分効かなかった経験をもつブラジル人女性が複数いたが,人種・民族の相違を考慮した薬剤処方量などの知見の導入が求められると考えられた。
著者
関連論文
- 育児中の在日ブラジル人の生活の特徴と社会文化的背景
- 女子大学生の月経周辺期における心身の変化 : ポジティブおよびネガティブな変化と月経イメージとの関連
- 米国メイヨークリニックにおいて産科医療に携わる上級看護師
- 米国メイヨークリニックにおける看護職者のカルチュラル・コンピテンス向上のための取り組み
- 母親のもつ乳児の泣きぐずりに関する知識と対処の実態 : コリックの視点から
- 中学生女子の月経随伴症状と家庭における月経教育の実態
- 育児中の在日ブラジル人女性の日本の母子保健医療に対する認識とその背景 : 日本の母子保健医療の課題に関する考察:第3報
- 育児中の在日ブラジル人女性の日本の母子保健医療に対する認識とその背景 : 日本の母子保健医療の課題に関する考察:第2報
- 母娘間の性に関する会話状況と性教育内容 : 初産婦を対象とした遡及的調査
- P-099 男性のもつ月経観と月経に関する知識の現状(Group65 性周期・月経,ポスターセッション,第51回日本母性衛生学会総会)
- 育児中の在日ブラジル人女性の日本の母子保健医療に対する認識とその背景 : 日本の母子保健医療の課題に関する考察:第1報
- 「乳児の泣きぐずりに対する母親の心理反応尺度」の開発
- 考え,想像する力を育てるPBL--看護学教育における展開方法とシナリオ作成法 (効果を上げるPBL演習)
- P-103 育児中の在日ブラジル人女性の日本の周産期ケアと保健医療システムに対する認識(Group45 その他,ポスターセッション)
- 外国人クライアントの看護において大切と認識された事柄の内容分析--青年海外協力隊看護職帰国隊員と公立総合病院勤務看護職の比較
- 看護職者の放射線に関する知識の現状と教育背景
- 出産場所選択要因に関する研究
- 男性のもつ月経観と月経に関する知識の現状--男子大学生および既婚男性への調査
- 男性のもつ月経観と月経に関する知識の現状 : 男子大学生および既婚男性への調査
- 非妊時の自己管理が良好ではなかった1型糖尿病をもつ女性の妊娠前から妊娠中期における経験と思い
- 20代未婚男女の避妊の意識と行動に関する記述的研究
- 非妊時の糖尿病自己管理が良好ではなかった1型糖尿病をもつ女性の産褥期における経験と思い
- 非妊時の糖尿病自己管理が良好ではなかった1型糖尿病をもつ女性の妊娠末期における経験と思い