列状間伐による木質バイオマス利用の可能性 : 東京農業大学大桁山分収林を事例として
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概要
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木質バイオマスは,石化資源にかわる再生可能な資源の一つであり,エネルギー問題や環境問題など様々な側面から注目されている。木質バイオマス利用を考える際に,林地残材の活用が重要である。しかし,素材価格の低迷,高額な素材生産費,容易でない林地残材の集荷などの問題から,林地残材は有効利用されていない。今後は,資源の供給や活用方法だけでなく,素材価格と素材生産費の関係に注目し議論する必要がある。列状間伐は低コストかつ集約的な間伐である。また,林地残材が作業道付近に散在するので,列状間伐による木質バイオマスは,V1 (素材市場や製材工場への生産量),V2 (作業道付近の利用可能な木質バイオマス量),V3 (搬出不可能な木質バイオマス量)に分けられると考えた。そこで,東京農業大学大桁山分収林で行われた列状間伐および間伐材の流通を事例に,素材価格と素材生産費から木質バイオマス利用の可能性を考察した。分析の結果,東京農業大学大桁山分収林における対象林分(3.98ha)からの間伐材は,V1が213.138m^3で,V3をほぼ0であると仮定するとV2が189m^3となった。素材生産費の内訳は,素材の伐採・搬出・運材費が1,535,494円,作業道開設費は1,791,000円であった。しかし,作業道開設と間伐に対する補助金を活用したので,素材生産費の負担は1,607,594円(7,543円/m^3)となった。V1は収益がマイナスの材と,収益が4,560円/m^3 (久保山(2009)による他のエネルギーとの競争が可能な価格)以下の材と,収益が4,560〜13,300円/m^3の材,三つに分類できた。V2材とV1材の一部を木質バイオマスとして利用すると仮定すると,1m^3あたりの素材生産費が下がり,マイナス材が減少すると推定した。本事例における木質バイオマス利用として,木質バイオマス資源への全利用という経営戦略が可能性の一つとして考えられる。
- 2010-06-25
著者
-
吉野 聡
東京農業大学大学院農学研究科林学専攻
-
矢部 和弘
東京農業大学地域環境科学部森林総合科学科
-
佐藤 孝吉
東京農業大学地域環境科学部森林総合科学科
-
矢部 和弘
東京農業大学大学院農学研究科
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佐藤 孝吉
東京農業大学地域環境学部
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矢部 和弘
東京農業大学
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佐藤 孝吉
東京農業大学
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吉野 聡
東京農業大学大学院農学研究科
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