痛みの伝達神経路と痛覚変調
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概要
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この総説では痛覚経路、下降性痛覚変調、およびグリアによる痛覚変調について解説する。痛覚経路では受容器の種類、発痛反応・発痛物質、侵害受容器に存在するレセプターについて解説した。脊髄の侵害シグナル入力部位は後角のI層が主であること、そして脳幹や視床への投射の事実を述べた。大脳皮質の一次体性感覚野(SI) で痛みの部位と強さを識別している。弁蓋・島領域を二次体性感覚野(SII) と言い、この領域は痛覚の学習と記憶に関係すると考えられている。帯状回前部は痛みの予想・予防の感情に関係すると言う提案がされた。下降性痛覚変調については、下降性疼痛抑制路の中脳中心灰白質(PAG)- 延髄腹内側部- 脊髄系が痛覚抑制に重要な役割をしている。内因性オピオイドを含むシナプスがPAG に発見され、オピオイドは視床下部から調節されている可能性が言われている。延髄腹内側部に痛みの応答行動に関係してスパイク発射を変えるON 細胞とOFF 細胞が存在する。大脳皮質は痛みの精神的な変調に関係していることが提案された。グリアによる痛覚変調では、痛みの持続や炎症の促進に関係する一酸化窒素、プロスタグランジン、アデノシン三リン酸、興奮性アミノ酸、インターロイキン、腫瘍壊死因子などをグリアは産生し、さらに痛みを増強している事実が報告された。MRPK (mitogen-activatedprotein kinase) ファミリーが痛覚の持続に関係していると言う研究が提出された。最後にグリアによる鎮痛の可能性が示され、今後の鎮痛研究の進歩が期待される。
- 2010-03-31
著者
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