食品製造工程で生じる臭気物質に関する研究 : (その1)しょう油醸造工場内の臭気物質とその発生源について
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概要
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穀類の酸加水分解に由来するアミノ酸液[Hydrolyzed vegetable orotein (HVP)]を原料の一つとして用いる新式醸造方式によるしょう油製造工程を含むしょう油製造工場内の空気中の揮発性物質を採取し、GC-MS分析を行った。その結果、ピークf、iおよびtと名付けた3つのピークが主として検出され(Fig.3)、それぞれはButadienylacetylene、Dimethyldisulfide、および3,7-Dimethyl-1,6-octadiene-3-olと特定された。これらのうち、ピークiおよびtについては標準品との対比によってDimethyldisulfideおよび3,7-Dimethyl-1,6-octadien-3-olと同定した。Dimethyldisulfideは生物由来の強い臭気物質として知られているが、その工場内空気中の濃度は0.0004ppmと算出した。工場内の臭気の発生源として可能性の考えられたHVP製造工程の中間生成物、中間廃棄物及び廃液処理直前の最終工程廃液に含まれる揮発性物質を同様に測定した結果、工程の最初の段階で生ずる穀物の塩酸加水分解物にはDimethyldisulfideはほとんど検出されず、工程が進むにつれてその音量が増加する傾向を認めた。したがってDimethyldisulfideは製造工程中に何らかの機構で生成し、工場内臭気の一つの要因になると考えられた。他方、ピークfの物質と3,7-Dimethyl-1,6-octadien-3-olは、最初の工程で生産される穀物の塩酸加水分解物に多く含まれ、工程が進んだ試料ではその含有量が減少した。3,7-Dimethyl-1,6-octadien-3-olは香気物質Linaloolとしてよく知られており、これがこの工場内臭気の原因物質である可能性は低い考えられる。ピークfの物質については、これが工場内の臭気とどのようなかかわりを持つか未解明である。本研究の対象とした工場では、上述のHVPを原料として含む新式醸造方式の他に、本醸造方式でもしょう油の製造を行っている.しかしながら、しょう油に特徴的な香気成分でその含有量の高いことの知られている4-hydroxy-5-methyl-3(2H)-furanone、2,3-butanediolおよび4-hydroxy-2(or 5)-ethyl-5(or 2)-methyl-3(2H)-furanoneは工場内空気から採取した試料中には検出されなかった。
- 日本食品化学学会の論文
- 2004-04-27
著者
-
義平 邦利
東亜大学大学院
-
義平 邦利
東亜大学大学院食品科学専攻
-
荒木 和美
東亜大学大学院総合学術研究科
-
荒木 和美
東亜大学大学院食品科学専攻
-
北村 章
東亜大学工学部
-
北村 章
東亜大学医療工学部食品安全工学科
-
北村 章
東亜大学工学部食品工業科学専攻
-
本田 親仁
東亜大学大学院総合学術研究科食品科学専攻
-
本田 親仁
東亜大学大学院食品科学専攻
-
荒木 和美
東亜大学大学院
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