優れた指導者のもつメンタルモデルの質的分析 : 音楽指導場面における教育情報の作用力に焦点をあてて

概要

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優れた指導者はいかにして学習者のパフォーマンスを高めているのだろうか。本稿の研究課題(research question)は,こうしたエキスパート指導者が指導場面において,状況をどのように理解し,どのような意図と見通しを持って,いかなる指導を行なっているのか,という教育情報の作用力について,音楽指導者を対象としメンタルモデル(mental model)の概念を用いて明らかにすることを目的としている。ヴァイオリン,ヴィオラ,ピアノ,マリンバ,及び声楽指導者を対象とし,深層的(in-depth),自由回答的(open-ended),半構造的(semi-structured)インタビュー及び行動観察が行われた。Patton(2002)による質的分析法に基づき,テキスト化された発話データを分析した結果,エキスパート音楽指導者のもつ指導メンタルモデルが,「技能習得」,「志向性の形成」,及び「支援的環境の構築」により構成されている点が明らかとなった。これ等3要因は,相互の関連の中で学習者の熟達化と意識化に働きかけ,学習者の認知的かつ身体的な変容をもたらす総合的作用として教育情報の作用力に関する概念的枠組みを形成している点が示唆された。