U18サッカー選手を対象とした卓越したパフォーマンス獲得要因に関する研究
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概要
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一般的に、才能とは生まれつき備わっており、才能に恵まれた選手はいとも簡単に卓越したパフォーマンスを得ることができると考えられがちである。しかし、才能は何年にも渡る日頃の洗練された訓練によって形成されるものであるとする近年の研究も報告されている(Ericsson 1996,Salmela 1996)。さらに、そうした才能が形成される過程において、家族、学校および地域社会といった環境は、幼年期にある周囲の影響を受けやすい選手に大きな影響があると報告されている(Bloom 1995)。本研究では18歳以下の日本人サッカー選手5名の発達過程を取り上げている。深層的インタビューが各選手、彼らの両親およびコーチを対象として行われた。インタビューは選手の幼年期から高校までの彼らを取り巻く環境と練習過程に焦点を当て行われた。結果として、卓越したパフォーマンスを獲得する上で重要と考えられる3つの要因が示唆された。すなわち、(1)環境的支援、(2)競技意欲、および(3)専心性である。第1の環境的支援に関しては、まず練習導入期において選手は家族から大きな支援を得ている。両親や姉は練習の度に、選手の送り迎えをしていた。また、兄は良き目標であり、同時に練習相手でもあった。第2の競技意欲に関しては、選手は高い目的意識を持って練習を続けてきた。例えば、選手は自ら厳しい練習をするために、選手が育った地域で1番レベルの高いサッカークラブに所属していた。そして、選手は長年にわたる献身的な練習を継続し、最終的に各選手は将来プロのサッカー選手になることを目指している。第3の専心性に関しては、選手は10年に渡り、平均5,000時間以上をサッカーの練習に費やしてきた。同時に、練習には高い質が求められる。卓越したパフォーマンスの発達は長年にわたるdeliberate practice(計画的に熱慮された練習)の結果であると考えられる。選手が才能を発達させるためには様々な要因が相互的に影響し合っている。その中でも、人的物的環境によって支援されている献身的で継続された練習は、卓越したパフォーマンス獲得のために必要不可欠であることが示唆された。また、高い競技意欲は専心性を高めるのに大きな役割を果たしている。これらの要因が選手をdeliberate practiceへと導き、パフォーマンスを育成していく点が明らかにされた。
- 東北大学の論文
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