精神看護学実習において看護学生が体験したゆらぎのレベルとその評定基準
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
背景 これまで看護学生のアイデンティティの「ゆらぎ」が注目され、確立途上のアイデンティティの不確かさが動揺につながることが指摘されている。精神看護学実習では、看護学生はコミュニケーションに困難を覚え、多くの「ゆらぎ」を体験していることが示唆されているが、体験した「ゆらぎ」がどの程度の規模(レベル)であったのかを評定する指標は示されていない。目的 本研究は、精神看護学実習において、看護学生が体験した「ゆらぎ」のレベルとその評価基準を提示することを目的とする。方法 精神看護学実習を終了した看護大学生9名を対象者とし、半構成面接を行い、精神看護学実習において体験した「ゆらぎ」のエピソードとその「ゆらぎ」のレベルの評定、各レベルを何により判断したか、その基準を話してもらった。その内容を質的帰納的に分析し、評価基準の内容を抽出した。結果 分析の結果、次の4レベルが抽出された。レベルI:わずかな疑問やネガティブな感情の反応で一瞬、対処に困るが、その影響力はわずかで余裕があり、外に現れない程度の反応で、自分自身で対処でき、自分から人に話すことでも対処できるレベル。レベルII:どういうことなのかと考え、ネガティブな感情の反応で対処に困り、その反応が外にも現れるが短時間であり、まだ余裕や見通しもあり、自分から人に話すなどにより、頭の中で状況を整理でき、その状況にも身を置くことができるレベル。レベルIII:ネガティブな感情による反応が制御できなくなりそうになり、顔を赤らめるなど外からわかる反応が現れる。わずかに見通しがあり、余裕も少し残っているが、自分だけでは対処不可能で、そのことを信頼できる人に話さずにはいられず、聴いてもらうことでその後対処することができるレベル。レベルIV:ネガティブな激しい感情体験のため、感情や行動の制御や状況把握が難しくなる。対処不能状態で見通しもなくなり、その状況から離れる。危機的状態に陥ることもある。また、余裕もなくなり、人の話がきけなくなったり、自分の置かれた状況を話すことができなくなったりする。話すだけでなく感情を表出することなどで対処できるようになるが、良くも悪くも周囲に与える影響は大きく、他者が話を聴くことも難しいレベル。結論 レベルIおよびレベルIIでは、看護学生と臨地実習指導者、教員がレベルIおよびレベルIIからの学びをより確固なものにするという共通認識を持つことの重要性と、レベルIIIおよびIVでは、「ゆらぎ」を体験した看護学生の感情の表出や思考の整理が促されるため、臨地実習指導者や教員の聴く姿勢の重要性が示唆された。
著者
-
牧野 耕次
滋賀県立大学看護短期大学部
-
松本 行弘
滋賀県立大学 人間看護学部
-
牧野 耕次
大津市民病院附属看護専門学校
-
甘佐 京子
滋賀県立大学人間看護学部
-
比嘉 勇人
滋賀県立大学人間看護学部
-
甘佐 京子
滋賀県立大学 人間看護学部
-
牧野 耕次
滋賀県立大学
-
甘佐 京子
滋賀県立大学
関連論文
- 身内の死を経験した看護師の「死後の処置」に対する思いの変化
- 日本とインドネシアとのスピリチュアルケアの比較研究 : 医療現場における「死後の処置」に焦点を当てて
- 精神看護学実習において看護学生が体験したゆらぎのレベルとその評定基準
- 精神看護実習において看護学生に生起したinvolvementの概念分析とその多軸評定の作成
- 精神看護学実習における学生が体験したゆらぎへのサポート
- 女子学生の携帯電話によるメール中毒状況とその心理的特徴(第2報) : 女子大学生と看護学生との比較
- 日本における精神科急性期看護の家族ケアに関する文献研究
- 看護師版対患者Under-Involvement尺度の開発と信頼性・妥当性の検討
- 看護師版対患者Over-Involvement尺度の開発と信頼性・妥当性の検討
- 看護におけるinvolvement尺度原案作成に関する研究
- 急性期における統合失調症患者家族アセスメントツールの考案
- 看護におけるinvolvement概念の構成要素に関する文献研究
- 大学と地域が連携した臨床看護研究のサポート育成に対する試み : 臨床看護研究サポートのスキルアップ研修の評価
- ベッドメーキング作業における作業時姿勢と自覚疲労度VASの検討 : 看護教員、看護学生、ヘルパー研修受講者の比較分析結果から
- PEF継続不可能な喘息患者の心理的検討
- 女子学生の携帯電話によるメール中毒とその心理的特徴
- 看護学生の喫煙に関する調査
- 看護におけるinvolvementの概念
- コーチング教育のコミュニケーション態度に対する変容効果--X事業所男性管理職補佐社員を対象としたOKグラムによる検討
- 中学校養護教諭の語りからみえてきた問題行動を示す生徒への対応の現状と課題--精神疾患への早期介入に向けて
- 精神科看護師による境界の調整に関する技術的要素
- 日本における精神科急性期看護の家族ケアに関する文献研究
- 在宅療養者と介護者の神気性(スピリチュアリティ)に関する要因分析
- 精神看護実習において看護学生に生起したinvolvementの概念分析とその多軸評定の作成
- 中学生を対象とした「こころの病気」に対する意識調査
- 文章完成法によるspirituality評定尺度の開発
- 急性期における統合失調症患者家族アセスメントツールの考案
- 看護におけるinvolvement概念の構成要素に関する文献研究
- 看護におけるinvolvementの概念
- 精神看護学の授業展開--ビデオ教材の効果と意義 (特集・「精神看護学」のいま)
- 精神科看護における看護師の「巻き込まれ」体験の構成要素とその関連要因
- 精神科看護における看護師の「巻き込まれ」体験の構成要素とその関連要因
- レジリエンスにおける心理的ストレス反応低減効果の検討
- コーチング教育導入による事業所社員の精神健康面への効果
- 看護におけるかかわり(involvement)研修の評価
- 感情投影表情描画法による心理アセスメントツールの開発