胎盤娩出後の子宮収縮を促すケアに対する産婦の身体的・心理的変化 : 冷罨法と自然観察法(非冷罨法)の比較
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は胎盤娩出後の子宮収縮を促し,出血量を減少させることを意図した助産ケアである「下腹部に冷罨法を実施するケア」(以下A群)と「冷罨法は実施せずに経過を自然観察するケア」(以下B群)について,身体・心理的側面の反応を比較する。調査は,胎盤娩出後に冷罨法を全例に実施している助産所と冷罨法は実施しない助産所の2ケ所で行った。産科合併症がなく正期産での出産を迎える女性を調査の対象としA群17人,B群15人を分析の対象とした。身体的側面には,深部体温計〔コアテンプ[○!R]CTM-210テルモ社製〕を使用し,前額部深部温(以下深部温)と冷罨法による下腹部の皮膚表面温(以下皮膚温)の変化を児娩出後の2時間にわたって測定を行った。心理的側面として後陣痛の強さをVASで測定した。結果(1)両群で深部温に有意差はなく,下腹部冷罨法は深部温に影響はなかった。(2)下腹部の皮膚温は,約35℃で冷罨法実施直前の両群では有意差はなかったが,A群では児娩出後1時間で22℃まで急激に下降していた。(3)児娩出後1時間の時点での下腹部の温度感覚は,A群では16名中8名が冷感を感じB群では15名中1人のみ冷感を感じていた。(4)冷罨法実施前までの出血量はA群190±127g,B群376±128g[t(23)=-3.63p<.05]となり有意にB群で出血が多かった。しかし冷罨法を実施していた時間帯の出血量はA群153±79g,B群122±47gとなり両群で有意差は認められなかった。今後は出血量の差異をもたらしたケア要因の探索が必要である。(5)後陣痛は両群のVASの得点の変化のパターンが違っていた。A群では児娩出後1時間〜2時間ではほぼ同じ強さであったが,一方B群では時間の経過とともに痛みが増強していた。本研究で冷罨法実施期間の結果からは冷罨法による積極的な子宮収縮への効果は得られなかった。よって子宮収縮が良好であればルティーンでの冷罨法の必要性は少ないと考えられる。
著者
関連論文
- 保健医療福祉教育機関等に勤務する看護職におけるe-learning開講に関するニーズ調査報告
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第44回)三陰交をはじめとする経穴への鍼刺激が及ぼす陣痛促進効果
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第23回)分娩時の胎児の回旋異常に対して,四つん這いは効果があるのだろうか?
- 冷え性ならびに腰痛のある妊婦の皮膚温度の基礎調査
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第31回)妊婦が胎動カウントを行うことは,胎児のwell-beingを評価するのに有効だろうか
- 助産モデルの展開を阻む現実 : 病院に勤務する助産師から見たケアシステムの問題点
- 分娩期ケアの質の評価 : 産婦と助産婦による評価の検討
- 看護ケアの質を評価する尺度開発に関する研究 : 信頼性・妥当性の検討
- 分娩期のケアの質の評価 : 産婦と助産婦による評価の検討
- 分娩期のケアの質の評価 : 助産婦のケアを構成する因子の分析
- 分娩期ケアの質の評価 : 産婦自身による評価に焦点をあてて
- これからの大学院教育を考える--豊かな職業,豊かな学問への努力と楽しみ (特集 大学院で助産を学ぼう)
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第46回)出生後に,新生児の臍帯の消毒は必要か?
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第28回)振動音響刺激は,胎児の予後を予測する検査方法として適当か?
- 不妊女性の選択をサポートする環境づくり:不妊をめぐるコミュニティ・エンパワメント--自助グループと看護職の協働によるアウトリーチ活動の評価
- P-096 潜在助産師の実態調査(Group45 その他,ポスターセッション)
- Problem-Based Learning におけるテュータの体験の分析
- 看護学士課程の母性看護学における Problem-Based Learning の教材開発
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第43回)分娩中の産婦への酸素投与は,胎児機能不全の回復に効果があるのか?
- 死産を経験した母親を支えるケア : セルフヘルプミーティングがもたらす人間的成長
- 胎盤娩出後の子宮収縮を促すケアに対する産婦の身体的・心理的変化 : 冷罨法と自然観察法(非冷罨法)の比較
- 出産を体験した女性が評価する妊産褥期のケアの質
- 卒業時の学生によるカリキュラム評価の推移 : 1995〜1997年度入学生
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第11回)妊娠中に運動するとどのような効果・影響があるのだろうか?
- 診療看護サービスのマネジメントに有用な電子経過表と看護関連マスタの設計
- 看護における人材育成(教育)の国際協力・協働に関する文献レビュー
- 英国と日本における国際保健・看護関連教育プログラム : 調査報告
- 378 分娩介助の「振り返り」場面にみられた臨床指導者の教育的意図(Group62 学生教育5,一般演題ポスター,第48回日本母性衛生学会総会)
- P-030 EBMに基づく助産ケアのガイドライン(分娩期)の開発と評価(Group58 分娩,ポスターセッション,第51回日本母性衛生学会総会)
- 生命倫理研究会の活動報告 : スピリチュアルケアを探る
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第36回)水中出産は母子の健康に有効だろうか?
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第26回)不妊治療後の産婦は,産後うつ病になりやすいのか?
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第25回)授乳期の母親が食事をコントロールすることは,子どものアレルギー発症の予防になるのか?
- 出産後5週から12週までの母親と子どもの睡眠の推移
- JICAブラジル母子保健プロジェクトとの協働 : 母性看護・助産学研究室における国際協力
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第19回)逆子体操(骨盤高位,膝胸位)は逆子を治すのに有効か?
- 聖路加看護大学21世紀COEプログラム第5回国際駅伝シンポジウム : 知恵と勇気を分かちあう女性たちの経験の中にみるPeople-Centered Careの構成概念
- 「開発途上国における看護技術移転教育プログラムの開発に関する研究」 : 国際ワークショップ報告
- 社会ニーズを先取りする看護政策論の構築
- 看護職者の e-learning 受講希望に関する因子の特定とその構造
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第16回)分娩期に分娩監視装置による持続的な胎児モニタリングは必要か?
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第13回)自然に生じた会陰裂傷の縫合は必要か?
- EBHC実践事例 分娩期(2)羊水混濁の新生児への分娩時吸引は必須? (特集 モデル事例で学ぶ「根拠にもとづく助産ケア」の進め方)
- 賢い研究の利用者になる方法論としてのEBM
- 根拠に基づくケアガイドライン : 周産期におけるDV被害者支援
- 双胎妊婦の腰痛に対する就寝前足浴の効果(予備研究) : 痛みの軽減に焦点をあてて
- 低リスク妊娠における適切な分娩時胎児モニタリング : エビデンスに基づいたガイドラインの勧め
- エビデンスに基づいたガイドラインの評価 : 低リスク妊娠における適切な分娩時胎児モニタリング(第7回聖路加看護学会学術大会)
- 開発途上国における地域看護力強化のための人材育成協力
- ピアカウンセラー養成セミナー受講後フォローアップ評価
- 開発途上国における地域看護力強化のための人材育成協力(第2報)
- 聖路加看護大学大学院における学位論文の特性 : 開設20年を振り返って
- 大学院修了生の動向 : 聖路加看護大学大学院1980〜2000(大学院将来構想プロジェクト)
- 看護職者に求められる遺伝看護実践能力 : 一般看護職者と遺伝専門看護職者の比較
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第49回)会陰損傷の痛みに,局所的な冷罨法は効果があるか?
- 死産が予測されていた両親の体験 : 親になる過程を支えたものに焦点をあてて
- 死産で子どもを亡くした母親の視点から見たケア・ニーズ
- 不妊治療後の多胎妊婦の思い--3事例の分析
- 大学院ウィメンズヘルス・助産学専攻の開設と国際交流協定の活用
- 女性のリプロダクティブ・ヘルスに関する認識の比較 : マラウイと日本
- JANS論文データベースの活用 : Directions for Use of JANS Literature Database System
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第45回)情報収集を気楽に続けよう
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第42回)妊娠中に骨盤底筋を鍛えることで、分娩所要時間が長引くのだろうか?さらに,吸引分娩などの器械分娩が増加するのだろうか?
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第41回)助産師主導のケアは,妊娠中の女性に対してどのような効果があるのだろうか?
- 世界の助産婦養成の実態
- 新たな家族の誕生を支えるしくみ--助産師の裁量権拡大への提言 (特集 産科医不足と助産師教育の充実)
- 看護基礎教育における助産師教育のカリキュラム (特集 看護基礎教育の方向性と保健師の教育)
- セルフマネージングチーム制のチーム力
- マネジメント方式としてのセルフマネジングチーム制に対する実践者の評価
- 管理方式としてのセルフマネジングチーム制に対する実践者の評価
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第27回)歯周病の治療は,早産を減らすことができるのか?
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第22回)妊娠後期のルチーンでの超音波スクリーニングは必要なのだろうか?
- 幼児への妊娠・出産・性に関する教育の効果
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第12回)分娩中の硬膜外麻酔は,産婦と胎児に悪い影響を及ぼすのだろうか?
- 新しく兄姉になる子どもと家族のクラス「赤ちゃんがやってくる」の実施と評価
- P-212 新しく兄姉になる子供を含めた第2子以降を出産する家族への支援 : 「赤ちやんがやってくる」の実施と評価(Group52 性教育,ポスターセッション)
- 看護者のもつ性暴力に対する態度と知識
- 日本助産学会誌掲載論文の動向と今後への期待
- 育てる喜びは、仲間を増やす喜び (総特集 研究者を育てる--大学院における研究法の教育) -- (研究者を育てる--研究法指導の実際)
- 臨床におけるEBNトレーニングの実際 (特集 エビデンスを使える実践者になろう!)
- 信頼される実践家・いまに満足しない変革家を育てる (第24回日本分娩研究会 シンポジウム これからの助産師像)
- 152 生後3か月間の添い寝における母児の夜間睡眠の推移(胎児・新生児1 子どもの生活,第49回日本母性衛生学会総会)
- 使える! 助産ケアのエビデンス(第24回)GBS陽性の産婦への抗菌薬投与は,効果があるのだろうか?
- NPO法人日本助産評価機構の活動
- ミャンマー連邦農村の母子保健向上をめざす人材育成プログラムのプロセス評価 : 第II期-2005〜2006-
- ルカ子母乳育児相談室の実績報告
- 持続的胎児心拍モニタリング法と間歇的聴診法の比較研究
- 助産所における安全管理
- EBNと文献データベース : 看護文献データベースの構築
- 日本看護科学学会における情報発信構想と研究支援
- 妊娠の中絶を選択した女性を支えるケア
- 女性にとって遺伝的特質を引き継ぐことの意味 : 常染色体優生遺伝疾患をもつ一女性の体験
- ミャンマー連邦農村の母子保健向上をめざす人材育成プログラムの開発 : 第I期-2003〜2004-
- 少人数参加型の出産準備クラスに参加した男性の父親になっていく体験
- 診療所で働く助産師確保対策モデルの開発
- 325 診療所の助産師就業確保のための調査(助産師、保健師等5, 第46回 日本母性衛生学会総会 学術集会抄録集)
- 女性にやさしい助産ケア : 会陰切開の適用を再考する
- 足浴が双胎妊婦の腰痛軽減に及ぼす影響(予備研究)
- O-080 会陰保護時に助産師の手掌にかかる圧力測定 : パイロットスタディ(Group15 分娩I,一般口演)
- 分娩介助時に助産師の手掌にかかる圧力 : 分娩介助モデルを用いたパイロットスタディー