ドイツにおける近代中等化学教育の成立 : アレントとウィルブラントの化学教育論を中心として
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概要
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19世紀後半期のドイツ(プロイセンを指す,以下同じ)において,化学教育改革の先駆者として活躍したアレント(Rudolf Arendt:1828-1902)とウィルブラント(Ferdinand Wilbrand;1824-1893)を取り上げ,彼らの化学教育論を目標論,内容論,及び方法論という枠組みにおいて比較検討し,そして両者の論がドイツの近代中等化学教育の成立に果たした役割を明らかにした。(1)彼らは化学のもつ文化・教養的価値,人間形成的価値を主張する立場から,化学の知識の習得や概念の獲得だけに終始するのではなく,加えて科学的な思考力や態度,探究能力の育成を求める新しい化学教育の目標論を主恨した。(2)彼らは化学反応ごとに,あるいはまた,身近な物質ごとに化学教育の内容を区分するとともに,子どもの生活経験や興味・関心,理解力といった教育的要請に配慮した内容構成を提示した。(3)彼らは従来の知識注入的・暗記中心的な化学教育の方法を強く批判し,科学的な思考力や態度の育成をめざして,帰納法に基づく実験教授法を提唱した。そして両者は,具体的には,仮説演繹法による教授過程を基本とし,アレントはその過程における帰納推理を,ウィルブラントは演繹推理を重視した。加えて,特にアレントは,化学教授の定型化を構想していた。彼らの化学教育論は,近代教育の基本原理と近代自然科学の研究方法との統一をめざしていたという点で重要であり,ドイツにおける近代中等化学教育の原型を形づくるものであった。
- 2006-03-31
著者
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