草地における密度の維持に関する生態生理学的研究 : 第3報 オーチャードグラス草地における刈取時期及び高さが個体数の減少過程に及ぼす影響
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概要
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前年秋にまいたオーチャードグラス草地について1964年に個体数減少過程を解析する試験を行なった。散播密植(445ヶ体/m^2),点播粗植(20ヶ体/m^2)及び条播密植(畝巾37.5cm,播種量は散播密植と同じ)の3区を設け,その各々について次の刈取処理を行なった。すなわち,第一回刈取りを生育時期別に6段階に分ち,さらにそれぞれを高刈(10〜12cm)と低刈(5〜7cm)に区分した。二番刈以降は各区とも草高が約50cmに達した時に同じく高刈,低刈を行なった。結果の大要は次の通りである。(1)個体数は密植区においてのみ減少が見られ,粗植区においてはいずれの処理によっても個体の枯死は起らなかった。密植区における個体数の減少はおもに次の3つの過程によって生ずると考えられた。i)相互遮蔽に起因する枯死;出穂始めから開花盛期にかけて,弱小個体が強勢個体の遮蔽下に入って光不足のために起る枯死。ii)刈取による枯死;(イ)春期の急生長にともない刈株の貯蔵炭水化物がほとんど消失する時期(穂揃期前)に刈取るために,窒素成分は多いのに再生不能となって起る枯死(ロ)7,8月の高温乾燥時の刈取後起る,いわゆる"夏枯れ"による弱小個体の枯死。この時期は刈株の炭水化物含有率は比較的高かった。(2)個体数の減少率は一般に第一回刈取が早期に行なわれる場合や,刈取の高さが高い場合に低い傾向があったが,1年を経過する間には様々な要因が関与して残存個体数の区間差が次第に縮少し,漸次一定数に近ずく様相を示した。(3)密植区の第一回刈取時の乾物収量は,各区とも開花期頃まで生育時期がすすむほど増大し,成熟期刈取の収量は倒伏によって減少した。粗植区では倒伏もなく成熟期まで増大した。第一回刈取後の再生量は刈取の早いほど多かったが,第一回刈取の収量差が著しく大きいので,年間の生草および乾物収量は,いずれの区においても第一回刈取を開花盛期頃行なった場合最高となった。(4)第一回刈取時の粗蛋白質収量はほぼ乾物収量と併行した。しかし年間粗蛋白質収量では,第一回刈取を開花期までに行なった低刈区においては,ほとんど区間差が認められなかった。高刈区においては年間乾物収量と逆の傾向を示し,第一回刈取を早く行なうほど年間粗蛋白質収量が多かった。(5)第一番草を乾草やサイレージとして利用する場合には体内成分,水分等を考慮に入れて,乾物収量の最高となる開花期前後が良いと思われるが,蛋白質収量,嗜好性等を考慮に入れて放牧用や青刈用に使う場合には第一回刈取を早目に行なう方が良く,ことに草地の維持上は後者の利用が有利であろう。
- 日本草地学会の論文
- 1966-03-30
著者
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