草地における密度の維持に関する生態生理学的研究 : 第2報 栽植密度を異にするオーチャードグラスの生育に伴う生産構造及び体内成分の変化
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概要
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1963年秋にオーチャードグラス(品種Frode)をまいて散播密植(445ヶ体/m^2),点播粗植(20ヶ体/m^2)の密度の著しく異なる草地を設け,翌春から生育に伴う草丈,草高,個体重の変化を調査すると共に群落の生産構造に着目して階層別乾物重,階層別LAI,群落内の相対照度,炭酸ガス濃度,体内成分などを測定した。結果の概要は次のとおりである。(1)本試験の範囲では密植区は相互遮蔽の影響を強く受けて,個体の生育は粗植区にくらべ著しく不良となり,個体当りの分けっ数,乾物重などが低かったが,群落全体としての面積当りの乾物生産は密植区の方が高かった。(2)密植区では,穂孕期前後においてLAIはすでに12に近く,著しく高い値を示したが,粗植区では出穂始期においてもなお6に達しなかった。粗植区では最下部の葉も終始或る程度の光を受けたのに反して,密植区では,穂孕期にすでに地上10cm以内はほとんど光合成に有効な光を受けず,それ以後は地上30cm程度まで同様の光条件となった。またこの周辺の空気中炭酸ガス濃度は,風の弱い晴天には日中においてさえ通常の空気の2倍以上に達した。このような著しい光不足と補償点以下のガス代謝の下で密植区においては下葉の枯れ上がりが早く,弱小分けっや,弱小個体の枯死が見られ草地の個体数が著減した。粗植区では個体の枯死は勿論,分けっの枯死もほとんどなかった。(3)Fructosanの含有率は,稈基部が最も高く,緑葉身は冬期のみ比較的高いがその他の季節では1%以下,稈基5cm以外の葉鞘と茎では1%をこえることはなかった。したがってFructosanは主に稈基に蓄えられるものである。稈基部では越冬前25%をこえる高濃度に蓄積されたが,積雪期間中に著しく減少し,融雪時には10%前後となった。その後牧草の急生長にともなって激減し,密植区で0.2%,粗植区で1.5%前後に低下した。しかし穂孕ないし出穂始頃から再び蓄積が始まり成熟期には10%以上に達した。春のFructosan減少は密植区において特に著しく,再蓄積の開始も粗植区より遅かった。Total sugarは植物体の各部一様に急伸長期と成熟期に含有率の低下が見られ,急伸長期の低下は密植区においてより著しかった。(4)蛋白態窒素は緑葉身において最も含有率高く,次いで葉鞘および茎,稈基部は最も少ない。しかし稈基部においても融雪直後は3%前後に達し,粗植区の方がかなり高かった。緑葉身,葉鞘および茎では春の急生長開始時(I)にはそれぞれ5%前後,4%弱の値を示し最高含有率となったが,この場合も粗植区の方が高い。その後発育の進むにつれ各部位ともに漸次減少して成熟期には最低となった。可溶性窒素も蛋白態窒素と同様の消長を示したが,その変動の巾は著しくない。しかし越冬中および融雪時稈基部において最も高い含有率を示したこと,可溶性窒素の中,硝酸態窒素が4月下旬に各部位とも一時0.3%以上に増加したことが目立った。
- 日本草地学会の論文
- 1966-03-30
著者
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