動物由来のブドウ球菌に関する研究とくに人の食中毒ブドウ球菌との関連について
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概要
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各種動物の健康皮膚面,鼻腔,口腔等の粘膜,あるいは乳などについて,コアグラーゼ陽性ブドウ球菌を検索し,正常ウシより35株,乳房炎ウシより57株,ウマより17株,イヌより68株,ニワトリより9株,計186株を分離し,これに人の食中毒由来ブドウ球菌57株と原乳由来51株を併せて供試し,その生物学的・血清学的性状を検査した結果つぎのような結論を得た。(1)人および各種動物由来株は,生物学的性状において,主として色素産生能,溶血性,ウサギ・フイブリン融解性(FL),卵黄因子(EYF),VP反応等に相違のあることが認められ,これらの異同より7型に分類することができる。第I型:黄色,α溶血,FL(+),EYF(+),VP(+);ヒト由来 第II型:黄色,βまたはαβ溶血,FL(-),EYF(-),VP(+);正常ウシ由来 第II-M型:黄色,α,αβ,βなど溶血に特徴がなく,FL(-),EYF(+),VP(+);乳房炎ウシ由来 第III-A型:黄色,β,FL(-),EYF(-),VP(+);ウマ由来 第III-B型:白色,β,FL(-),EYF(-),VP(-);ウマ由来 第IV型:白色,β,FL(-),EYF(+),VP(-);イヌ由来 第V型:黄色,α,FL(-)だが,ヒツジ・ブイブリソを平板法で融解し,EYFは主として(-),VP不定;ニワトリ由来これらの各代表株より製したウサギ免疫血清を用いてスライド凝集反応を行ない,さらに吸収試験を実施した結果,代表株間にも相違のあることが認められ,いずれも独立した菌型であろうと推論した。(2)以上の分離成績と菌型より各種動物由来株と人の食中毒との関連についてつぎのように論及することができる。i)人の食中毒を起こすブドウ球菌は,動物系とは異なった,独立した性状を有しており,動物種が食中毒の直接の原因になるとは思われない。ii)原乳中には,正常ウシに由来する第II型,乳房炎ウシに由来する第II-M型および人に由来する第I型ブドウ球菌が共存する場合がある。iii)人系株が,ウシ乳房炎の一部の原因にもなり得るもののごとく,また,イヌとニワトリからも分離された事実より,人系株がこれらの動物にも分布しているものであることを知った。iv)従って,人のブドウ球菌性食中毒は,原乳やウシ乳房炎乳の飲用あるいはイヌやニワトリとの接触によっても起こり得る。
- 帯広畜産大学の論文
- 1970-11-25
著者
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