鼻疽菌補体結合反応の反応域に関する研究 : III.補体増強による反応域の変動ならびに抗原抗体の最適比の測定
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概要
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われわれは鼻疽菌の補体結合反応における抗原および抗体の構成する反応域に対し,第3の因子と目される補体を順次増強して,本反応域の変動を観察した。その成績を総括すれば次の通りである。(1)鼻疽自然感染馬血清とOs抗原との間に構成されるA相反応域は,補体増強に伴って抗原過剰部の反応阻止帯の限界には大きな動揺を示さずに,抗原あるいは血清の寡少側より漸次消失して,抗原および抗体の濃厚な共存部に移動し,遂には抗原過剰部に限局されるに至る。また抗原および血清が同一に混合されながら補体寡少部の陰性反応が補体増強によってむしろ反応が発現して陽性に転ずる諸点を認めた。(2)同じ自然感染馬とAP分劃抗原によって形成されるA相反応域は補体の増強に伴い,Os抗原の場合と異なって抗原抗体濃厚共在部に移動局限することなく,漸次周囲より圧縮され,補体12単位以上に増加すれば反応域はことごとく消失する。(3)同じ自然感染馬とAS分劃抗原との間に構成される非特異域およびA相類似の特異反応域のうち,非特異域は補体を6単位に増強すれば一律に消失するが,特異域は12-24単位に増強してもなお抗原および抗体の濃厚共在部に限局して残存する。(4)以上補体漸増によって反応域は変転するが,その経過中随所に最高補体結合点を認めこれを連結することによって一定の抗原抗体最適比線を描くことができる。(5)Os抗原を供試すれば,出現部位を異にした2条の最適比線が認められる。これをαおよびβ線と仮称すれば,α線は抗原寡少部に,β線は抗原濃厚部に出現する。(6)AP分劃抗原を供試すれば,ただ1条の最適比線がOs抗原のα線に該当した部位に認められるので,α線はAP分劃抗原に由来する単一抗原抗体系の最適比線と想像される。(7)AS分劃を供試して最適比線を求める時はOs抗原のβ線に該当した部位に認めるので,同様にβ線はAS分劃に由来する単一抗原抗体系の最適比線と目される。(8)αおよびβの両最適比線は出現部位ならびに由来分劃を異にするほか,α線は補体量6単位以下において出現が著明で12単位以上になれば消失するが,β線は補体量6単位以上においてなお明瞭であった。またα,β両線とも抗原および抗体混合比の倍加律に従わないもののように観察された。(9)本節(1)-(3)に記述した補体増強に伴なう反応域の変転はα,β両線の補体に対する特質によって解明される。(10)AS分劃抗原の反応域に認められるA相類似特異域はα,β両線の特性によってAS分劃中に混入した劃分不充分に基づくAP分劃の残存によるものでないことが明らかである。(11)鼻疽死菌を以ってした高度および軽度免疫家兎血清においても同一関係にあることが認められた。ただし軽度免疫家兎血清のごとく,微弱なα線に比しβ線が圧倒的に強力な際にB相反応域が形成されるものと解される。
- 帯広畜産大学の論文
- 1962-10-10
著者
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