帯広市周辺における河川の水質汚濁について
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概要
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帯広市周辺における河川水の水質汚濁進行状況を把握するため,十勝川,札内川,帯広川にそれぞれ1ヵ所,帯広川支流のウツベッ川に3ヵ所の河川水,ならびに汚濁源と推定される乳業工場,都市ガス工場,および動物園の放流廃水につき,12〜14項目にわたる水質調査を実施した結果,つぎのような成績を得た。(1)上水源である札内川のBODは0.5〜25ppm,平均1.7ppmであった。また過マンガン酸カリウム消費量は平均3.8ppm,総硬度平均15.4ppm,蒸発残留物52ppm,塩素イオン5.Oppmなどで,それぞれ上水道水質基準よりかなり低く,さらに一般細菌数や大腸菌群も少なく,清浄な上水源と考えられる。(2)十勝川のBODは1.7〜3.4ppm,平均2.6ppmであり,9月から1月にかけて高い。これは上流の農産物加工工場の操業が原因と思われる。また十勝川はサケを養殖する重要な河川であるが,9月から1月にかけて3ppm前後となるので漁業被害が出るおそれがある。(3)家庭排水がおもな汚濁源と思われるウツベツ川上流地点のBODは5.1〜15.8ppmであり,平均値で9.2〜9.5ppmを示した。都市ガス工場および乳業工場廃水を合流した下流水域では,BOD15.8〜46.1ppm,平均30.Oppmで,工場廃水のためいちじるしく汚濁されている。またCODとその他の検査項目においても同様工場廃水のためウツベツ川下流は上流より汚濁が著明に進んでいる。(4)帯広川の上流は比較的清浄であるにもかかわらず,市内を貫流する水域のBODは3.7〜16.Oppm,平均8.Oppmを示すのは,支流のウツベツ川がその汚濁源となっているものと考えられる。(5)家庭排水の汚染指標の一つとして考えられる陰イオン活性剤(ABS)は,ウツベツ川下流で0.05〜0.14ppm,平均0.09ppm,帯広川下流で0.03〜0.10ppm,平均0.05ppmで公害の少ない程度と見られる。(6)ウツベツ川および帯広川に放流する都市ガス工場の廃水は,BOD11.0〜208.Oppm,平均86.7PPm,フェノールは0.02〜3.50ppm,平均2.00ppm。乳業工場の廃水はBOD5.9〜90.1ppm,平均40.Oppmを示し,BOD以外の諸項目もそれぞれ相当度の高い価を呈するので,これらの河川の汚濁源とみなすことができる。(7)動物園内を流れるウツベツ川のBODは2.4〜10.6ppm,平均6.3PPmであったが,各動物舎の池水放流時には,一時的に2.9〜17.1ppm,平均8.8ppmとやや増加し,汚濁の原因になることもありうると考えられる。本研究の一部は昭和44年度帯広市より委託された受託研究費によるものであって,同市当局の方々に深謝するとともに,研究遂行にあたり,ご援助を賜わった当帯広畜産大学獣医公衆衛生学教室の各位に謝意を表する。
- 帯広畜産大学の論文
- 1971-09-16
著者
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