外科的矯正治療における咀嚼運動と口唇閉鎖機能の変化について
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概要
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本研究では,外科矯正治療患者の横断的,縦断的資料をもとに,顎顔面形態と口唇閉鎖機能,およびこれに伴う咀嚼運動機能との関係を検討した.横断的研究として17名の正常咬合者と17名の治療前の顎変形症患者,および術後の患者13名を選択し,縦断的資料として5名の顎変形症患者を選択しインフォームドコンセントを得た.術後の資料は横断的資料では動的治療終了後,平均1年2か月であり,縦断資料では平均3か月であった.ホルター型筋電計を用い安静時の下唇の筋活動とガム咀嚼時の下唇,および左右咬筋の筋活動を計測した.安静時(30秒間)の口唇閉鎖時と離開時の下唇の筋活動をもとに被験者をincompetent lip群とcompetent lip群に分類した.また,口唇を閉鎖,離開時のガムの自由咀嚼のうち15ストロークを抽出し,全咀嚼時間と咬筋収縮期,および咬筋弛緩期の持続時間と期間中の下唇の平均活動電位を記録し以下の結果を得た.1.横断的,縦断的研究においても正常咬合者と比べて,術前の顎変形症群の下顎骨の時計回転と顔面高が大きかった.2.術後には下顎骨の時計回転や顔面高は改善され小さな値を示したが,正常咬合者と比べると下顎骨の時計回転は依然として大きな値を示していた.3.正常咬合者においても多くの無力性口唇が認められたが,術前の顎変形症群のすべての被験者に無力性口唇が認められた.4.術後の安静時の下唇の平均筋活動量は術前に比べ有意に減少していたが,半数が無力性口唇を示していた.5.口唇閉鎖咀嚼時の下唇の筋活動は正常咬合者と比べて術前の顎変形症群では有意に大きかったが,術後には有意に減少し正常咬合者と比べても有意差を示さなくなった.6.顎変形症群の口唇閉鎖および離開時の咀嚼時間は,正常咬合者群と比べて有意に大きな値を示した.術後においても有意な減少は認められなかった.以上のことから,外科矯正治療によって顎顔面の垂直的大きさの変化が咀嚼運動と口唇閉鎖機能の回復に影響を与えている可能性が示唆された.術前に無力性口唇を持つ患者においての,顔面高を短縮する,術前矯正や術式の選択は重要なものと考えられた.
- 2007-03-25
著者
-
一田 利道
九州歯科大学共用試験OSCE実行委員会
-
山口 和憲
九歯大・顎機能矯正
-
一田 利道
九歯大・顎機能矯正
-
田村 仁美
九州歯科大学歯科矯正学講座
-
山口 和憲
九州歯科大学歯科矯正学講座
-
田村 仁美
九州歯科大学健康促進科学専攻機能育成制御学講座顎口腔機能矯正学分野
-
山口 和憲
九州歯科大学 歯矯正
-
田部 麻美
九州歯科大学健康促進科学専攻機能育成制御学講座顎口腔機能矯正学分野
-
山口 和憲
九州歯科大学 健康促進科学専攻 機能育成制御学講座 顎口腔機能矯正学分野
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