アニサキス属線虫の遺伝子変異と抗原多型を解明する研究

概要

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近年, PCR-RFLP法は, 形態学的に鑑別不可能なAnisakis simplex同胞種(A.simplex sensu stricto, A.pegreffii, A.simplex C)の同定法として,その有効性が証明された。そこで本研究では,日本近海に生息し,形態学的にA. simplexと同定された虫体について,rRNA遺伝子ITS領域のPCR-RFLP解析を行った。その結果,ITS領域の制限酵素切断パターンにより,北方域の幼虫(100%)と成虫(94%)はA. simplex s.str.,南方域の幼虫(97%)はA.pegreffiiと同定した。又,今回は,これら同胞種2種の混合感染は認められなかったが,両地域において交雑型を検出した。さらに,アニサキス症患者から摘出された虫体についても,同法により同定を行ったところ,調査した患者の99%より摘出された虫体はA.simplex s.str.であり,九州の患者1名(1%)のみでA.pegYeffiiの感染が認められた。日本近海ではA.simplex s.str.とA.pegreffiの2種が生息し,南北に分かれて分布しているが,アニサキス症においてはA.simplex s.str.が最も重要な病原虫と示唆された。
麻布大学の論文