食用茸であるササクレヒトヨタケ成分の生理活性について
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概要
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ササクレヒトヨタケの抽出画分について,生理活性の一つであるマイトジェン活性能をスクリーニングしたところ,熱水抽出-非透析性画分(C-2)に強い活性が認められた。C-2の活性本体を明らかにするために,C-2をイオン交換クロマトグラフィーにより分離・精製した。その結果,主に中性糖からなるC-2-1(84.8%の中性糖と17.3%の酸性糖からなる)画分と酸性糖を多く含んだC-2-2(69.7%の中性糖と30.9%の酸性糖から構成される)画分の二つのメジャーな画分に分離した。糖組成を検討するために,常法により糖のGLC分析を行った結果,C-2-1の構成糖とモル比は,Rha,Fuc,Xyl,Man,Gal,Glc (0.1: 0.3: 1.2: 1.0: 1.4: 3.3)であり,C-2-2では,Rha,Fuc,Xyl,Man,Gal,Glc (0.4: 0.4: 0.1: 0.5: 1.0: 13.6)であり,特に,C-2-2はGlcの含量が高いことがわかった。また,C-2-1およびC-2-2の両画分について,マイトジェン活性の存在を検討した結果,C-2-2の方に強い活性が認められたので,これ以後はC-2-2について詳細な解析を行うこととした。活性本体の化学構造を明らかにするために各濃度段階のTFAを用いて部分水解を行った。つまり,C-2-2を0.01M,0.05M,0.1M TFAで順次加水分解し,それぞれの水解物を蒸留水透析した後,透析性画分CD-1,CD-2およびCD-3と非透析性画分CN-1,CN-2及びCN-3を得た。各画分について,マイトジェン活性の所在を検討したところ,いずれの透析性画分にも活性は認められなかったが,非透析性画分ではすべての画分が活性を示すことがわかった。しかしながら,最も高濃度のTFAで加水分解したときの非透析性画分CN-3は,CN-1およびCN-2と比較すると顕著にその活性が弱くなった。このことから,CN-2はC-2-2の活性本体であることが強く示唆された。またGLC分析により構成糖及びモル比を測定したところ,CN-2はFuc,Xyl,Man,Gal,Glc (0.2: 0.2: 0.2: 1.0: 51.4)であり,主にGlcから構成されることがわかった。以上より,Glcからなる構造ないしはその結合様式がCN-2の活性に最も重要であることが推測された。また,CN-2は約30%の酸性糖を含むことから,Taylor&Conradの還元法により酸性糖部分を還元し,同様に構成糖およびモル比を測定した結果,還元前に比して顕著にGlcが増加した。従って,このことはCN-2の構成酸性糖GlcAに由来していることが示唆され,CN-2はGlcとGlcAから構成されるヘテロ多糖であることが明らかになった。今後,活性と化学構造との相関をさらに検討してゆく予定である。
- 麻布大学の論文
著者
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堂ヶ崎 知格
麻布大学環境保健学部
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堂ヶ崎 知格
麻布大学
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川上 泰
麻布大学
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関 亘
麻布大学
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堂ヶ崎 知格
麻布大学大学院環境保健学研究科環境保健科学専攻
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角野 洋一
麻布大学
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角野 洋二
麻布大学
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