京都府木津川堤防および河川敷におけるチョウ類群集の季節的・年次的変動
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概要
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京都府京田辺市を流れる木津川において1999年から2005年の7年間に堤防(2地区)とそれに隣接した河川敷(1地区)の3種類の植生成でチョウ類群集を調査した結果,堤防および河川敷から39種のチョウ類が記録された.堤防地区は河川敷地区よりも種多様度指数H'が高い傾向にあった.また,堤防地区と河川敷地区との間では種数に有意な差がみられ,優占種構成もかなり異なっていた.さらに,チョウ類群集の重複度Cπも堤防地区と河川敷地区との間では低い使を示し,チョウ類群集は大きく異なっていた.堤防地区では外来種ホソオアゲハが最優占で以下,モンキチョウ,ベニシジミ,ヒメウラナミジャノメ,モンシロチョウなどすべて草原性の種が優占しており,また,同じウマノスズクサを幼虫の食草とする在来種ジャコウアゲハも優占的な種であるなど,これまで報告のある他地域に比べかなり特異的なチョウ類群集であった.堤防地区ではチョウ類群集の年次的変動が比較的小さく,これは定期的に行われている草刈やその焼却によって季節的には撹乱があるものの年次的に見た場合には比較的安定した状態を保っているためと推察された.一方,河川敷地区ではモンシロチョウが最優占種で,以下,べニシジミ,モンキチョウ,キタキチョウ,キタテハなどの主として草原性の種が優占していた.また,チョウ類群集の年次変動が比較的大きく,河川の氾濫(年間平均6回ほどの洪水がある)という物理的要因が大きく作用しているものと推察された.また,外来構物の増加による植生の変化がチョウ類群に大きく影響している可能性が示唆された.このことから,河川地域におけるチョウ理群集の保全には,堤防の草刈に間する配慮(草刈時期や使用機材等),外来生物の侵入に対する対策等をとる必要があると考えられた.
- 2007-06-07
著者
-
菅野 格朗
近畿大学農学部環境生態学研究室
-
東條 達哉
近畿大学農学部環境生態学研究室
-
八木 立夫
近畿大学農学部環境生態学研究室
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道岡 康史
近畿大学農学部環境生態学研究室
-
小笠原 士
近畿大学農学部環境生態学研究室
-
桜谷 保之
近畿大学農学部環境生態学研究室
-
桜谷 保之
近畿大学農学部農学科
-
桜谷 保之
近畿大学農学部
-
桜谷 保之
近畿大学農学科害虫学研究室
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