急性期成人看護学演習における学生の協同学習および説明活動による学習効果 : 授業体験レポートの質的分析による考察
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概要
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背景 看護の大学教育においては、学生のグループワーク学習や参加型授業を取り入れることが多い。しかしながら、看護大学の急性期成人看護学演習において、認知状況アプローチの立場で授業展開した報告は少なかった。今回、小集団による主体的な授業運営、自分たちの学んだ知識と技術を他の学生に説明し伝えるという説明活動を取り入れた協同学習の授業を試みたので、その学習効果を報告する。目的 急性期成人看護学演習において状況認知アプローチによる協同学習および説明活動による学習効果を明らかにする。方法 研究デザイン:質的記述的研究法。調査対象:大学看護学部3年生57名(男性2名、女性55名)。調査期間:H17年4月13日〜7月29日。調査内容:協同学習である小集団、参加型授業の展開を企画した。(1)急性期看護援助に関する学習目標と9の学習課題を提起し、基本的に学生の関心の高いテーマを選択し、グループ編成する。(2)各グループは、選択したテーマに沿った授業を準備する。(3)教師により各グループに必要な助言、指導を行う。(4)担当グループによる3回の繰り返し説明する授業を実施。(5)担当グループによる授業体験レポートの提出。分析方法:レポートをデータとし、KJ法による分析を行った。倫理的配慮:対象者には研究の趣旨を文書で説明し、プライバシーの保護に努めた。結果 分析の結果、1)グループワークによる学習、2)授業計画の修正、3)教えるスキルの獲得、4)心理的な満足、5)内省的な評価、6)看護援助への発展の6つのカテゴリーに分類された。カテゴリー間の関連図を作成し、文章化した。考察 状況認知アプローチに基づく協同学習である小集団、参加型授業を企画し、学生間の説明活動を取り入れることで、学生同士の実践的な相互作用が促進され、知識が獲得されると同時にコミュニケーションなどの対人関係の技能が発展し、教えるスキルを獲得するという効果がみられた。学生は他の学生に説明活動を行うことで自己の知識をモニタリングし、自分の理解に矛盾があると克服しながら知識を獲得していく過程がみられた。更に繰り返し説明することは知識の定着化につながったと考える。結論 今回、状況認知アプローチに基づく協同学習に説明活動を取り入れることで以下の点で学習効果が明らかとなった。1)グループワークが機能することで学生間の相互作用が促進され、知識の共有、対人関係スキルの発達が高まったと認識されていた。2)自己知識モニタリング・知識補足により知識が拡大し、自己学習スキルが向上したと認識されていた。3)教えるスキルの獲得と同時に看護師の重要なスキルであるという気づきが得られた。
- 滋賀県立大学の論文
- 2006-03-31
著者
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