退職移行期にある看護者の健康と社会活動に関する実証研究 : 退職看護者の人材活用システムの課題
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概要
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背景 人口の高齢化の進展は日本の看護政策にも大きな影響を与えつつある。とりわけ、団塊の世代が高齢期に入る今後は、退職看護者の職業経験を生かした社会活動の制度を構築することが急務である。しかしながら、これまで、看護労働において主として注目されてきたのは、新人におけるバーンアウトの問題や、日本の女性労働に特徴的なM字型就労にともなう中途退職の問題であった。再就労対策においてもこれらの人びとに焦点をあて、ナースセンターが中心的役割を果たしてきた。しかし、団塊の世代の看護者が大量に退職すると予測される中で、より有効な人材活用を考えていくためには、退職移行期にある看護者の健康と再就職を含めた社会貢献活動への参加意向を明らかにする必要がある。目的 退職移行期にある看護者について、職位、配偶者の有無などの基本的属性や健康状態、社会参加状況を統計学的に明らかにする。方法 滋賀県内の中高年期の退職経験のある看護者(以下、退職者という)および勤務している看護者(以下、勤務者という)に対してアンケート調査を実施した。退職者240名、勤務者687名を分析対象とした。健康状態、社会活動参加状況、老化意識尺度、退職準備度、退職後の就労意向および生活変化に関する無記名自記式アンケートを行った。結果 1)退職者と勤務者の両者を比較したところ、健康状態(健康自己評価、PGCモラール尺度、愁訴数)および老化意識尺度において統計的に有意な差が認められ、退職者は勤務者より良好な状態であった。特に、勤務者のPGC点数は低値であり、老化意識と有意に関連している。2)老化意識は健康に関する4変数(健康自己評価、PGCモラール尺度、愁訴数)に有意に関連している。3)退職者は勤務者に比べてアクティブな日常生活を送っているが、勤務者の退職後の生活に対する生活イメージはネガティブである。4)退職者の社会参加度は、退職準備度、親しい友人数、PGCモラール尺度、老化意識尺度と相関しており、退職後、社会活動に参加するためには退職準備が重要である。5)退職者、勤務者の双方ともに高い再就労意欲を示しているが、退職者は公的な人材活用システムを活用せず、個人的なネットワークで再就職していた。結論 退職看護者の労働力は潜在的な労働力として期待できるにもかかわらず、現行の人材活用システムは十分に活用されていない。今後、行政と看護職能団体が協力して、より地域社会に密着したシステムを構築する必要がある。
- 2006-03-31
著者
-
藤井 淑子
滋賀県看護協会
-
西島 治子
滋賀医科大学
-
堀井 とよみ
滋賀県立大学人間看護学部地域交流看護実践研究センター
-
西田 厚子
滋賀県立大学人間看護学部
-
筒井 裕子
滋賀県立大学人間看護学部
-
平 英美
滋賀医科大学医療文化学講座
-
太田 久佐子
滋賀県看護協会
-
柴崎 さと子
滋賀県看護協会
-
平英 美
滋賀医科大学
-
筒井 裕子
藤田保健衛生大学
-
堀井 とよみ
滋賀県立大学人間看護学部
-
太田 久佐子
滋賀県立大学 人間看護学部
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