GnRH類似体による牛卵巣疾患の治療

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乳牛121頭と和牛89頭の計210頭の卵巣疾患にGnRH類似体の1回筋肉注射をした.投与量は卵巣嚢種に対して500μg, 排卵障害, 卵巣静止, 卵巣萎縮, 卵胞発育障害に対して200μgを標準とし, 病状により増減した.GnRH投与後は, 1ヵ月以内の発情率と2ヵ月以内の授精による受胎率を調査した.卵巣嚢腫64例では, 発情率36%, 受胎率39%となり, 発情までの日数は17.5±8.6日であった.排卵障害51例では, 発情率88%, 受胎率69%となり, 発情までの日数は1.4±2.7日と19.5±5.5日の2つのピークを示した.卵巣静止63例では, 発情率62%, 受胎率49%となり, 発情までの日数は14.0±8.8日であった.卵巣萎縮12例と卵胞発育障害20例では, 発情率と受胎率がそれぞれ42%と17%, 55%と25%になり, GnRHの効果はあまり認められなかった.卵巣疾患に対する最終分娩後からGnRH投与までの期間については, 2〜3ヵ月で発情率69%, 受胎率54%と良好であったのが, 10〜12ヵ月ではそれぞれ53%と37%へと漸減し, 13ヵ月以上では40%と25%に低下した.卵巣疾患以外に, 受胎率の向上を目的として, 夏期に37頭の乳牛にGnRH200μgを授精時に投与し, その効果を39頭の生食対照群と比較した.しかし, 暑熱の影響のためか, 受胎率は対照群の43.6%に対し, GnRH群も43.2%にとどまり, 差が見られなかった.本研究の結果, GnRHは排卵障害に最も有効で, ついで卵巣静止と卵巣嚢腫にも効果のあることが判明した.また, 分娩後なるべく早期に適切な診断をして投与すると, 効果の高くなることも示された.
鹿児島大学の論文
1989-03-15

GnRH類似体による牛卵巣疾患の治療

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