黒毛和種牛の関節軟骨潰瘍性病変における関節液の性状

概要

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関節軟骨病変を有する手根関節においては, 肉眼的に著変のない軟骨部分にも組織学的病変のあることを明らかにした結果に基づき, 軟骨の栄養と関節潤滑の両面で重要な機能を営む関節液の性状について検討した.1.検索材料としては, 山梨県食肉衛生検査所の食肉処理場材料から無作為に55頭を抽出し, 潰瘍性病変の認められる手根関節から78試料を採取すると同時に, 対照として肘関節からも28試料を採取した.2.解体後の関節液を無菌的に採取した後, pH, 細胞数, 塗抹像, 比重, 酢酸ムチンテスト, 蛋白量(Folin-Lowry法), 粘度などの測定の他, 微生物学的検索(好気性菌および嫌気性菌およびマイコプラズマ)も実施した.3.肘関節液群・手根関節液群とのいずれにおいても微生物の分離や炎症性細胞の増加など, 感染や炎症性病変を示唆する所見は見られなかった.4.関節液内全細胞数は小数であったが, その内容では白血球数が両群間で有意差を示さなかったのに対し, 赤血球数は手根関節液群が肘関節液群に比べて明らかに多く, しかも肥満細胞や滑膜上皮細胞などを主とする単核円形細胞が著明に増加していた.5.手根関節液群では, 肘関節液群に比べて生理的食塩水に対しての比粘度が有意に低かった.6.また平均蛋白量でも手根関節液群(15.6mg/ml)は肘関節液群(21.0mg/dl)より有意に低値であった.7.関節液pHは両群間で有意差がなく, 手根関節群で7.43(73.0〜7.50), 肘関節液群で7.41(7.29〜7.61)であった.8.関節液比重も両群間で有意差はなく, 手根関節液群では1.013(1.010〜1.015), 肘関節液群では1.012(1.009〜1.014)であった.9.関節液酢酸ムチンテストでは両群ともほとんどがI度およびII度であり, IV度のものは1例も認められなかった.10.関節軟骨病変の多発していた手根関節液群では, 対照とする肘関節液群に比べて赤血球や単核円形細胞が多く認められたが, これらの細胞は軟骨陥凹部に再生した結合織から関節内に落下したものと考えられた.さらに蛋白や関節液の粘度低下が認められたことから, 関節液の主成分であるPGとくにHAの分子量の低下が示唆された.
鹿児島大学の論文
1986-03-15

黒毛和種牛の関節軟骨潰瘍性病変における関節液の性状

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