稲種子の休眠性および発芽性に関する研究 : VIII 登熟中並びに収穫後の温度条件が種子の休眠および穎の変性に及ぼす影響
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概要
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本研究は休眠性品種Ketaktaraを供試して, 登熟中の温度が種子の休眠程度, 種子内生の発芽抑制物質の活性および穎組織の変性に及ぼす影響を明らかにするために行なわれた.1.開花期より収穫期まで, 第1図に示された温度条件下で成熟した種子について, その収穫期より休眠覚せい期まで10日毎に発芽試験を行ない, 休眠程度の変異の程度を測定した.30℃で登熟した種子の休眠程度は自然条件下で登熟した種子のそれよりも低下した.その低下の程度は処理期間が長いほどまた登熟初期ほど大であった.そして25℃で登熟した種子の休眠程度はやゝ強化される傾向が示された.2.30℃および25℃で登熟したそれぞれの種子に含まれる発芽抑制物質の活性を剥離胚の培養法によって検定した.30℃処理種子の発芽抑制物質の活性は25℃処理種子のそれよりも大きく低下していた.登熟中の温度処理による種子の休眠程度の変異と発芽抑制物質の活性との間には前報の自然休眠覚せいにおける関係と同様に発芽抑制物質の活性の低下によって休眠程度が低下するという関係が存在すると推定された.3.30℃, 25℃および自然条件下で登熟した種子の穎の表面構造を走査電子顕微鏡によって観察した.30℃で登熟した種子の穎の外側表皮に亀裂が発見された.この亀裂は穎の内側表皮にも認められた.亀裂は穎の基部より中心部にかけての範囲で主に観察され, その部位は円形突起と円型突起の中間部で(第8図, 第12図), 円形突起縦列の1列のもの(第11図)から数列に及ぶもの(第12図)まであったが, 2〜3列に及ぶものが最も多かった.亀裂の幅は約0.8μmとほゞ一定であった.つぎに, 種子の休眠を効果的に打破する50℃処理を10日間施した種子について, 穎の表面構造を同様に観察した.亀裂は極めて大きく, 無数にしかも不規則であり, 最大幅は90μmに及んだ(第13図, 第14図).4.以上の結果から, 稲種子の休眠覚せいに対する全く新しい解釈が得られた.すなわち, 処理種子の休眠短縮は種子内生の発芽抑制物質の不活性化の程度に支配されるが, この両者の密接な関係に種子の穎の酸素透過性が大きく関与するものと推定された.
- 鹿児島大学の論文
- 1979-03-19
著者
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