稲種子の休眠性および発芽性に関する研究 : VII.剥離胚の発芽による発芽抑制物質の検定並びに種子の休眠程度との関係
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概要
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稲種子の休眠性とその要因物質との関連を明確にするために, 稲種子の剥離胚の培養法を応用して, 休眠性の要因物質が胚の発芽に及ぼす作用を解析した.1.稲種子の剥離胚の培養によって発芽抑制物質の活性を定量的に検定する新しい方法が確立された.この方法はアブサイシン酸(ABA)を含む培地に稲の剥離胚を置床して, 置床後2日目より7日目までの毎日の発芽率を測定し, 置床後の日数別の発芽率の差から, ABA濃度間の作用の差異を検定するもので, 検定しうるABAの濃度範囲は0.001mg/lから5mg/lで, その10^<-1>mg/lの濃度間におけるABAの抑制度の差異を検定しうるものであった.この方法は種子に共存する促進物質の大きな影響を受けないので, 発芽抑制物質の定量的検定に適していると考えられる.2.アベナ伸長テストで稲種子の休眠性の要因物質であると推定されていた2つの生長抑制物質はいずれも稲種子の発芽を抑制する発芽抑制物質であることが明らかとなった.そして, 休眠覚せいと内生の発芽抑制物質との間には, 発芽抑制物質の活性の低下に伴なって休眠が覚せいするという関係の存在が再確認された.さらに, 稲種子の発芽に対する抑制作用は, かって著者らがABAと同定した物質が他の発芽抑制物質よりも著しく強い発芽抑制作用力を有し, 稲種子の休眠性の要因物質はABAが主体であることが確認された.3.人為的な処理によって休眠が打破される場合に, 種子内生の発芽抑制物質は不活性化される.休眠打破の効果の出現が発芽抑制物質の不活性化を伴ない, さらに, 処理の違いによる打破効果の出現の時間的な差異は発芽抑制物質の不活性の程度の差異として認められることがわかった.4.稲種子の休眠性の遺伝的な解析は発芽試験によってなされてきている.しかし, それらの結果には少々矛盾する点があり, それほど明確ではない.著者らは, 遺伝的な研究において, 休眠種子の穎, 胚乳および胚に内生する発芽抑制物質の定量的検定が剥離胚の培養法によってなされるならば, 休眠性の遺伝を明確に説明しうると考える.
- 鹿児島大学の論文
- 1979-03-19
著者
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