丘陵住宅地の景観評価予測モデルに関する研究
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概要
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(1)本研究は,丘陵住宅地における快適な住宅地開発の景観計画に資する,景観評価予測モデルの作成を目的として行ったものである.その目的を解決する方法として,丘陵住宅地の現況調査と現況景観の分類から景観の評価指標を求め,景観評価指標を基にシミュレーション景観を作成し,その景観を用いて景観評価実験を行って,丘陵住宅地の景観評価指標と評価との関係を明らかにした.そして,これらの結果を用いて,景観評価予測モデルの作成を行った.(2)丘陵住宅地の景観認識特性を明らかにするために,多摩ニュータウンにおいて現地調査と現況景観の写真撮影を行い,収集した景観写真を用いた分類実験と既往研究の成果を参考にして,(1)住棟規模,(2)緑量,(3)緑質,(4)屋根の形,(5)住棟向き,(6)住棟間隔,(7)住棟位置,(8)スカイラインの8項目の景観評価指標を抽出した.(3)景観評価指標と評価との関係は,CCGによって作成したシミュレーション景観の評価実験から次の結果を得た.(1)住棟規模,スカイライン,住棟間隔については,最も影響が大きいのは住棟規模,次いで住棟間隔,スカイラインの順序である.(2)住棟規模と評価との関係は,中層・低層の住棟の評価が高く,高層の住棟は評価が低い.(3)丘陵住宅地景観の評価構造として,因子分析を行った結果から,総合評価軸,自然環境評価軸,目立ち度評価軸を得た.(4)因子分析結果の総合評価軸の因子得点を外的基準とし,緑量,緑質,住棟位置,住棟向き,屋根の形の5つの景観評価指標を説明変数とした数量化I類による分析結果から,景観評価予測モデルを作成した.(1)景観評価予測モデルにおける評価への影響は,緑量が最も強く,以下,屋根の形,緑質,住棟位置,住棟向きの順位である.(2)各景観評価指標のカテゴリーが評価にどの程度影響しているかが定量的に明らかになり,その結果丘陵住宅地の景観を眺望的に捉えたシーンに限られるが,景観評価の予測が可能となった.(3)景観評価予測モデルを適用して現況景観に対する評価を行い,景観計画への展開の適用性を試行した.この研究ではシミュレーション景観による評価実験を用いたが,これはあくまでも景観の一側面を捉えたものに過ぎないという問題がある.今後同種の研究の積み重ねにより,解決していく必要があると考える.また,今回は視点からの距離を一定にして,眺望景観を研究したが,景観評価予測モデルの確立には,視点の距離を変化させた研究や,住宅地の内部景観についても検討が必要と考える.なお,景観写真の分類実験では明確にならなかったが,眺望景観のなかには,住棟や緑量・緑質などの他に,さまざまな景観構成要素があり,それらも景観評価にどの程度影響しているかを検討することが,精度の高い景観評価につながるものと考える.
- 1992-03-25
著者
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