湿原におけるササの生態的動向
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概要
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近年北海道の湿原にササの侵入が著しく,湿原植生はササ群落におきかわりつつある。本研究は湿原の保全の立場から,湿原におけるササ群落の動向を知るために,サロベツ原野のチマキザサ群落および月形町月ヶ湖学術自然保護地区のクマイザサ群落で,1979年と1980年の2年間にわたり,ササの外部諸形態および分布と土壌の水分条件との関連さらに水分条件としては,地下水位と酸素拡散速度について研究を行なった。1.土壌の湿潤化に伴い,ササの稈は小型化し現存量が減少する。小型化は稈高・基部直径・葉数および葉面積などの減少によるものであった。その中でも葉数の減少は葉の展開が途中で停止してしまうためであり,稈高の減少は節間生長の減少によるものであった。2.小型化と現存量の減少はミズゴケ層の発達により根系が厚いミズゴケにおおわれることと,それに伴う高い地下水位によって土壌中の酸素拡散速度が低下することなどが大きな原因となって起こる。稈の小型化が最も著しい方形区では深さ20cmにおける酸素拡散速度は0.15-0.25×10^<-6>g・cm^<-2>・min^<-1>であった。3.湿原におけるササの分布は,地下茎の深さと地下水位および酸素拡散速度との関係によって支配されると思われる。地下茎の伸長によって,乾燥あるいは適潤地から湿原のような湿潤な地域にも侵入できるササの形質は湿原において群落を広げていく上で有利である。これは地下茎を通じて酸素や栄養塩類を補給することによるものと思われる。4.ササの侵入の状態は湿原の乾燥化を示す指標となりうる。湿原の保全のためにはササの侵入を許すほどの環境変動を引き起こさぬような対策が最も重要である。
- 北海道大学の論文
- 1986-03-21
著者
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