サロベツ湿原の植物生態学的研究
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概要
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1.北海道最北端日本海側海岸低地に発達しているサロベツ湿原の群落分類をおこない,また湿原の一部に線状調査区を設けて群落の分布と立地条件との関係について解析,記述し,湿原の発達と植生遷移について考察した。2.本湿原の群落分類の結果,水生植物群落について3群集,1群落,8基群集,沼沢地および低層湿原植生について2群集6群落18基群集,高層湿原植生について6群集1群落23基群集を認めた。さらに湿原周辺草本群落について1群落,森林群落について6群落を認めた。3.本湿原構成群落のうち,新しい群集としてヒメカイウ-ミツガシワ群集を認め,その分布と群落構造の特徴について記述した。4.尾瀬ヶ原湿原との比較の結果,本湿原を特徴づける群落は高層湿原ではチャミズゴケ群集,ガンコウラン-スギゴケ基群集,ガソコウラン-地衣類基群集,また沼沢地および低層湿原植生ではヒメカイウ-ミツガシワ群集,キタヨシ群集,チマキザサ群落,イワノガリヤス群落,ムジナスゲ群落,ヤラメスゲ群落があり,分布規模の大きさからも低層湿原植生の方に特異性のあることを明らかにした。5.群落の構造および分布と地形との関係から湿原周辺部はヤチハンノキ林と低層湿原であり中央部一帯が高層湿原になっていて,両者の中間にチマキザサ群落が広い面積で介在していることを知った。6.高層湿原はチマキザサ群落とスマガヤ群集より成る周縁複合体とhollow (pool)-hummock復合体,および余り顕著でない静止,侵蝕複合体からできており,池沼複合体の発達は微弱であるが明らかにされた。7.高層湿原の発達は構成群落の多様さと泥炭層の発達程度の両面からみて,上サロベツ湿原の方が下サロベツ湿原より著しいことを知った。8.阪口らの地史的研究成果を基礎とし,現存植生の群落型,その分布と立地条件との関係などの研究結果から本湿原の植物群落の推移系列を考察した。
- 1980-03-28
著者
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伊藤 浩司
北海道大学大学院環境科学研究科生態系管理学講座
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伊藤 浩司
北海道大学環境科学研究科
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橘 ヒサ子
理学部生物学教室
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橘 ヒサ子
山形大学理学部生物学教室
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伊藤 浩司
北海道大学大学院環境科学研究科
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