精神病院における沈澱現象とその動態 : 兵庫県一地域における定量的研究

概要

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我が国精神医療の有史以来, 入院精神医療の圧倒的大部分は単科精神病院によって担われてきた。精神病院は, 急性期の治療はもとより慢性患者の長期療養や社会的入院も受け入れているのが現状で, 生活リハビリテーションも含めて精神障害者に必要なあらゆる治療的機能を期待されている。したがって長期に入院を継続する患者の病院における比率の増加は, 入院治療需要に対する病院の供給能力を低下させることになり, これがいわゆる「沈澱」と呼ばれる現象である。我々は兵庫県内の一地域に属する17の精神病院を対象に, その設立から1995年末における病床数, 年間入院件数, 年間退院件数, 常勤医師数を中心とした調査を行い, 年間入院件数の病床数に対する比率を「有効病床指数」とした。これらを用いて, 沈澱という観点から個々の病院や地域全体の状況およびその変遷についての定量的な分析を試みた。有効病床指数は比較的端的に沈澱を表現していた。また, 本研究の対象病院の多くで近年も増床の都度沈澱が進行しており, 増床前に病床超過が抑制されたり増床後速やかな満床達成が要求されるといった病院運営上の変化による沈澱の促進が示唆された。そして地域全体の入院精神医療動態については近年安定的に推移しているが, 病院内外の超高齢化と増床不可能時代という新たな局面における入院精神医療の需給バランスが今後の課題と考えられた。
神戸大学の論文
1997-12-01

精神病院における沈澱現象とその動態 : 兵庫県一地域における定量的研究

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