精神分裂病の回復過程に関する研究(1) : 大きな再発悪化をみない回復遷延例とその回復律速要因について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
精神分裂病はしばしば,長期,多様,変化に富む疾患である。本論文は再発なく数年から十数年に及ぶ緩慢な回復過程をとった症例全3例の自験例について初診以来の全経過を追跡展望するもので,そのため症状の推移を明確に図上に同定しうるグラフ形式を開発した。横軸には時間を,縦軸には症状をその特異性を初め主観的要素を一切排除し無差別的に発来の順序に配列し,持続的症状及び遷移的症状の軌跡と散発的症状とを抽出することができた。これを用い,症状を使用薬薬物量及び対人交流改善と生活圏拡大とに対応させた。第第1に,律速因子は強い打撃力を持つ持続的症状であるる。他方,遷移的症状は移行期を意味する。最重要な因因子は睡眠であり,睡眠が改善することなく回復が実現現した例はない。睡眠,夢,不安・恐怖は3つ組となってており,この解消が回復につながり,この3者が悪循環環を構成して破局に至るのが再発と考えられる。特に第第1例(青年男子)では専ら機会的な全不眠とほとんどど持続的な悪夢である。第2例(中年女子)では不安に始まり心気症状に終わる約2時間の発作的な病的挿間である。第3例(青年男子)では律速因子は幻聴の裏に潜む性的少数性の自覚にからむ葛藤である。第2に,治癒的変化は必ず反作用すなわち揺り戻しを伴う。精神(中枢神経系)に成立した病的な疑似的ホメオスタシスが身体の正常なホメオスタシスとのずれ回復困難を構成している可能性が抽出された。
著者
関連論文
- 強迫神経症患者の全生活の縦断的研究 : 特にその回復過程の顕在化をめぐって
- 中井久夫連続講義「補講」(新連載・1)境界例の人にどう接したらよいか
- 精神病院における沈澱現象とその動態 : 兵庫県一地域における定量的研究
- 精神分裂病の回復過程に関する研究(1) : 大きな再発悪化をみない回復遷延例とその回復律速要因について
- 中井久夫連続講義(最終回)回復とは、治療とは……。
- 中井久夫連続講義(6)回復初期は、からだに注目
- 私の歩んだ道 (退官教授の歩み)
- 「創造と癒し序説」--創作の生理学に向けて (特集・創造と癒し)
- 被災地内部から--レポ-トを書いてしまった人間の4か月目のレポ-ト (阪神・淡路大震災--現場からの報告)
- 現代ギリシャ詩 : 「愛の歌」ほか