中年男子軽症高血圧改善に及ぼす低強度高頻度レジスタンス運動の効果
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概要
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高血圧症は心筋梗塞, 脳卒中, 動脈硬化の独立した危険因子になっている。日本人30歳以上の成人男子の約48%が軽症を含めた高血圧症とされている。高血圧関連疾患や死亡の予防として軽症高血圧症時の血圧コントロールは重要な関心点である。薬物による高血圧治療は著しい効果をあげているが, 好ましくない副作用の発現も見逃せない。薬物療法に対して運動療法が近年広く処方されるようになってきた。これまでに多くの研究が有酸素運動の降圧効果を報告しているが, レジスタンス運動による降圧効果については異なる知見が出されている。そこで本研究においては, 有酸素運動の様式に似た低強度-高頻度レジスタンス運動を用いて中年軽症高血圧男子に対する降圧効果を検索した。方法。42歳-56歳 (平均48.3) の男子10名が被検者として参加し, 内5名がレジスタンス運動群 (RE) に他の5名がウオーキング群 (AE) に区分された。RE群は10種目のウエイト運動を最大筋力の40-50%強度, 20-25レペテイションで2-3セット, 週3回の形で12週間行った。一方のAE群は同様に予測最大心拍数の60-75%強度の30分速歩を週3回, 12週間行った。結果。安静時血圧においてRE群はAE群より程度は低いものの有意な (P<0.05) 下降を示し (REが収縮期圧7.2, 拡張期圧3.6mm Hgの下降に対してAEはそれぞれ11.8, 7.8mm Hg), その結果安静時血圧は149.8/91.2mmHg から142.6/87.8mmHg に改善された。同時に全身持久性の増加 (VO_<2max>値2.3ml/kg/min=6.9%) と身体組成の改善 (体脂肪1.5kg=8.8%減) が見られ, その改善率はAE群に比べて小さいがいずれも有意であった (AE群 : 6ml/kg/min=17%, 3.1kg=18.9%)。また, 体重もしくは体脂肪の減少量と降圧値との間には有意差が得られなかったが相関傾向が見られた。しかし, AE群と異なり, RE群では血清総コレステロール, 高比重リポ蛋白コレステロール, 低比重リポ蛋白コレステロール, トリグリセライド (中性脂肪) の血清脂質・リポ蛋白濃度の有意な改善は見られなかった。結語。これまで血圧や身体組成もしくは有酸素性体力の改善, 向上に対するレジスタンス運動の効果については意見の一致をみていない。考えられる要因の一つに運動の処方の違いが挙げられる。血圧や身体組成の改善に対しては低強度・高頻度による運動量負荷 (Volume loading) の処方が好ましく, 高強度による過重負荷 (Over-weight loading) は至適処方とは言えないであろう。今回の研究においてレジスタンス運動による血清脂質の有意な改善が見られなかったのは総運動量が十分な刺激とならなかったものと考えられる。本研究は低強度高頻度のレジスタンス運動の習慣化が軽症高血圧患者の健康改善に効果的であることを示唆するものである。
- 2000-04-25
著者
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小林 義雄
中京大学教養部
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竹内 敏子
中京大学教養部
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細井 輝男
中京大学教養部
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金坂 孝
日本エアロビクスセンター
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池 誠治
日本エアロビクスセンター
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島田 光剛
日本エアロビクスセンター
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小林 義雄
Chukyo University
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細井 輝男
中京大学教養学部
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