磁界の生体に及ぼす影響
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概要
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科学技術の進歩に伴い、自然環境下には存在し得ない磁界環境が我々の身の回りに形成されつつある。そのような状況下、1979年には米国で高圧送電線近辺の居住民に白血病が多発することが報告され、それ以降磁界の生体影響についての研究が精力的に進められるようになった。近年の磁界研究では、発がん性に着目した研究のみならず、磁界(変動磁界と静磁界)の生体影響のメカニズム解明を目的として、個体ならびに細胞レベルで多くの研究が行われている。例えば個体レベルの研究では乳腺腫瘍の促進などが、細胞レベルでは細胞膜を通したイオンの流入出などが報告されている。しかし一方ではこれらを否定する報告も見られ、統一的見解はまだ得られていない。その理由として、磁界に高い感受性を示す生物的指標が知られていない上に、生体特有の機能である情動などが磁界影響の検出を困難にしていると考えられている。また変動磁界を用いた実験では、磁界自体による効果と興奮性組織への刺激や熱の効果を分離することが難しいため、実験上の問題点も指摘されている。本稿では、これらの磁界研究の現状と主な問題点について整理、解説するとともに、それらの改善のために静磁界を用いた細胞レベルの研究が重要であることを指摘する。またその研究成果は環境問題の理解と改善に役に立つばかりでなく、磁界の積極的な医療応用への展開も考えられるので、例えばコラーゲン配向効果等、その目的のためにこれまでに得られている主な知見についても概観する。 キーワード:低周波磁界、高周波磁界、静磁界、非熱効果、細胞レベル With spreading magnetic fields in our environment, effects of the magnetic fields on the biological systems have been of great concern, and the effects of low frequency, high frequency, and static magnetic fields have intensively been evaluated. Although there have been many reports so far on the effects, it is still being argued if there are significant effects or not. In the final reports of RAPID (Research and Public Information Dissemination) program completed in 1999 in the United States, it was concluded that the magnetic fields exposure makes little effects on the human health. One of the reasons why common understanding has still not been fixed yet may be attributed to various experimental setups of studies. If we use an animal, for example, we must consider various biological factors such as emotion and hormones in addition to the magnetic effects themselves. Furthermore, alternative field may induce thermal and stimulation effects on the excitable tissues as well. To overcome the situation, as the first step, studies on the effects of static magnetic field (with non-thermal, non-stimulation effect) on cellular level (without humoral and/or emotional factors) must be quite useful. The results of the study may be applicable to the medical and tissue engineering fields. Keywords: Low frequency magnetic field, High frequency magnetic field, Static magnetic field, Non-thermal effect, Cellular level
- 2006-02-15
著者
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中村 孝夫
山形大学大学院医学系研究科生命環境医科学専攻
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中村 孝夫
山大院・医学系・生命環境医科学
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馮 忠剛
山形大学 工学部 応用生命システム工学科
-
小野 寿樹
山形大学大学院理工学研究科システム情報工学専攻
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野村 保友
山形大学大学院医学系研究科生命環境医科学専攻生体情報工学講座
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馮 忠剛
山形大学工学部応用生命システム工学科
-
野村 保友
山形大学大学院医学系研究科
-
中村 孝夫
山形大学大学院医学系研究科
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