北海道南西部の地下浅層にすむチビゴミムシ類

概要

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北海道には複眼の退化したチビゴミムシ類が少なく, これまでには, 日高, 夕張の両山脈と渡島半島から, 地中性の種類が知られているにすぎなかった。1986年の夏に行なった現地調査で, 渡島山地の地下浅層から, 属の異なる2種のメクラチビゴミムシが発見された。これらは, 形態的にみると地中種の範疇に入るが, 生息場所は深くて, 洞窟種の生息域に含まれる。いずれも新種と認められたで, 次の新名を与えて記載した。ニシカワチビゴミムシEpaphiopsis (Epaphiama) nishikawai S. UENOオシマメクラチビゴミムシOroblemus parvicollis S. UENOニシカワチビゴミムシは, 国内での分布域が渡島半島に限られるキタチビゴミムシ亜属Epaphiamaに属し, センゲンチビゴミムシE. oligops S. UENOに近縁である。これらの2種が渡島山地の固有であるのに対して, 利別川以北の新しい火山には, より進んだ形質をもつ種類のみが分布している。このことからみて, 狩場山やニセコなどに分布する系列の種類は, 渡島山地のものより新しく分化したと考えてよかろう。オシマメクラチビゴミムシの方は, これまで東北地方と佐渡のみに分布の知られていたキタメクラチビゴミムシ属Oroblemusに属するが, かなり孤立した特徴をもち, 真の類縁関係が明らかでない。しかし, 本州側から津軽海峡を越えて渡島山地に侵入した祖先型に山来することは確かである。この型の拡散が, 陸地伝いに行なわれたのか, それとも洪水や風の力で海峡越しに行なわれたのか, を判定するのはむずかしいが, 北海道の中でも渡島山地だけに分布する, 本州起源のゴミムシ類があることは, 生物地理学的にみて注目に値する。オシマメクラチビゴミムシもその一例である。
国立科学博物館の論文
1987-12-01

北海道南西部の地下浅層にすむチビゴミムシ類

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