ミズナラ生育土壌中の他感作用物質
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概要
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コナラ(Quercus)属の植物は約300種以上が北半球温帯に生育し,家具,建築,船舶,車両,酒樽等の製造に使われている重要な有用樹種である。その一種,ミズナラ(Quercus mongolica Fisch var. grosseserrata Rehd. Wils.)は北海道に多く見られる。この植物の純林と混交林とも,樹の下に雑草が成長しないことから,アレロパシーの存在が考えられたので,ミズナラの樹の下の土壌を用いて,レタス,アオビユ,チモシーおよびコムギ植物の栽培実験によってアレロパシーを調べた。その結果,この土壌は植物の成長に対して強い抑制を示した。テストに用いた4種類の植物の成長はそれぞれ50%-90%抑制された。(Fig.2,3)。この土壌から中性とフェノール性物質を抽出し,それぞれ酢酸エチルとブタノールで分画した(Fig.1)。レタス,アオビユ,チモシーおよびヒエの4種類の種子発芽と幼植物の生育テストにより,4つの分画の中で,フェノール性抽出物質を含む酢酸エチル画分は最も強い成長抑制を示した(Fig.4,Table 1)。HPLC, EI-MS,および^1H-NMR等によって,この分画から3,4-dihydroxybenzoic, p-hydroxybenzoic, 3,4,5-trime-thoxybenzoic, 3, 4,-dimethoxybenzoic, vanillic, p-coumaric, ferulic acids, p-hydroxybenzaldehydeとkaempferolの9種の成長抑制物質が同定された。この内 p-coumaric, ferulic, vanillic, p-hydroxybenzoic acids, p-hydroxybenzaldehydeとkaempferolは土壌中でそれぞれ13,382, 3,542, 2,952, 2,164, 1,378, と990μg/100g土壌と高い含量が示された。ミズナラの生育土壌におけるこれらのフェノール酸物質の総量(23,418μg/100g土壌)はSasa cernua(9,000), Picea jezoensis (6,002), イネ(21,214), トウモロコシ(5,639), ジャガイモ(11,055), ニンジン(1,315), 大豆(2,720), ビート(4,317)の生育土壌より高かったが,アカマツの生育土壌より低かった (Table 2)。以上の結果から,ミズナラの生育土壌中のフェノール性他感作用物質は森林種群および林下雑草の分布に重要な役割を果たしていると思われる。
- 日本雑草学会の論文
- 1993-12-22
著者
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西村 弘行
北海道東海大学工学部生物工学科
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西村 弘行
北海道東海大学工学部
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李 海航
新技術事業団水谷植物情報物質プロジェクト
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ラブンミ ラジデ
新技術事業団水谷植物情報物質プロジェクト
-
長谷川 宏司
新技術事業団水谷植物情報物質プロジェクト
-
水谷 純也
新技術事業団水谷植物情報物質プロジェクト
-
水谷 純也
植物情報物質研究セ
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水谷 純也
(社)植物情報物質研究センター
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長谷川 宏司
植物情報物質研究セ
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水谷 純也
(社)植物情報物質研セ
-
水谷 純也
新技術事業団水谷プロジェクト
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水谷 純也
新技術事業団 水谷植物情報物質プロジェクト
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