家畜福祉に関する意識調査
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概要
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日本人の動物福祉に関する基本的な考え方を把握するため、アンケート調査を595名に対して行った。回答者は様々な地域の男女半数ずつで、すべての年齢層をカバーし、学生、主婦を始め多岐にわたる職種からなっていた。家畜実験動物、およびペットについてそれぞれ、殺すこと、急性的に虐待すること、慢性的に虐待すること、および肉体を切断することに対する許容性を尋ねた。各質問に対する拒否・許容反応を評価すると共に、許容性の高い順に5〜1点の評点化を行い、主成分分析および最小2乗分散分析に供した。食肉および医療のための屠殺・急性ストレスには特に寛容的であった。そして遊びとしての虐待や身勝手な理由による虐待には特に非寛容的であった。行為の許容性に対する第1、第2、第3主成分はそれぞれ、「動物一般に対する哀れみの情」、「遊びとしての虐待への許容性」、「弱い経済的理由や人間のある程度のエゴによる虐待への反発性」と解釈された。評点には回答者の性と年齢、質問の対象動物種、行為の種類、理由の有無の効果が有意であった。女性に較べ男性の方が、動物に対する侵害である屠殺、ストレス付加、虐待等に寛容的であり、60歳以上が他に較べ寛容的で、20歳未満が他に較べて非寛容的であった。対象動物では家畜に対し寛容的となり、次いで実験動物、ペットの順に寛容性は落ちた。処理では、殺すことが他に較べ寛容的で、慢性的な虐待、急性的な虐待、肉体の切断の順で寛容性は落ちた。人間優先的で経済的理由がある場合には圧倒的に寛容的となった。さらに家畜福祉と経済性に関する質問では、72.1%の人が家畜に対しストレスを与えない飼い方を望み、ある程度の価格上昇をやむを得ないと回答した。これらの結果より、家畜福祉に関する我が国の意識は欧米と基本的に異ならないこと、そしてさらに食文化、特定動物への感情(伴侶動物文化)、動物福祉運動に影響されることも示唆された。日本家畜管理学会誌、32(2)43-52.1996.1996年5月7日受付1996年7月5日受理
- 1996-10-11
著者
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