牛糞尿の流通に関する2・3の考察 : 東京都の事例調査から

概要

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牛糞尿流通の実状と問題点を明らかにするため、牛糞尿に関して深刻な状況にあると思われる東京都下において、酪農家24戸の聞取り調査を行った。また、神奈川県三浦半島の耕種農家3戸についても広域流通の観点から調査した。調査結果と考察を要約すると、次の如くである。1.牛尿は流通利用されることが少なく、乳牛排泄物の流通については専ら牛糞のみが対象となっている。2.酪農経営から見た場合、1頭当り耕地面積が牛糞流通の必要性に大きな要因として影響しており、かつ、都市近郊においては、その面積が2.5a/頭未満の場合に譲渡の必要性が急激に増大する。3.その際、一般的に無償譲渡は極めて少なく、より有利な流通を行なおうとする姿勢と趨勢とが覗える。また、1頭当り耕地面積が比較的大きい酪農家ではより高額の譲渡を望むのに対し、小さい酪農家では兎も角も有償譲渡であればとの傾向がある。4.牛糞の譲渡単価を高くする為には、悪臭・排汁が少なく、重量に比し容積が小で運搬・施用し易い形態が必要となり、それにつれ処理方式も高度化せざるを得ない。5.一方、耕種経営においては、牛糞は、土壌改良剤としての観点、並に、運搬上の点からも、家畜糞の中でも殊に有用視されている。6.牛糞集荷に関し実績を有し、かつ、大なる潜在需要を持っている三浦半島の耕種農家でさえも現在の50km流通圏を更に広域化するには阻害要因が多過ぎ、耕種農家側か見て将来における牛糞の広域流通の見通しは明るいとは云い難い。7.酪農家側から見ても、現在の牛糞流通でさえ酪農家の負担において成立している面が多く、より広域な流通の為、火力乾燥を必要とする状況となれば、それは経済的に耐え得ないものとなろう。8.国・公共団体は酪農家に対しては糞尿処理施設の補助を、耕種農家に対してはダンプトラックの貸与や購入堆肥に対する補助等を行ない、家畜糞流通を維持・促進して来た。然しながら、今後におけるより広域の流通を促進する為には、この様な方策と異なり、広域化に即した別種の奨励対策が必要と考えられる。
日本家畜管理学会の論文
1979-03-25

牛糞尿の流通に関する2・3の考察 : 東京都の事例調査から

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