秋季および初春の中部山岳地域における大気中酸性, 酸化性物質の挙動
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概要
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1991年10月, 1992年11月および1994年3月に実施した共同研究の調査結果を基に, 秋季と初春の中部山岳地域八方尾根(標高1,850m地点)における酸性・酸化性物質の挙動について解析した。八方尾根における大気質は極東アジアの自由大気下層を輸送される汚染物質を代表すると考えられる。オゾンおよびダスト濃度は1時間毎に, PAN(peroxyacetyl nitrate), SO_2および粒子状物質(NH_4^+, SO_4^<2->, NO_3^-, Cl^-, 金属成分など)の濃度は6時間周期で測定した。1991年10月と1992年11月の調査では, 期間中に大気汚染物質濃度は大きく変動したが, オゾン, ダストおよびPAN濃度はそれぞれ50ppb程度, 50μg/m^3程度, 1ppb程度まで達することがあった。また, 二次生成物質であるSO_4^<2->, 総硝酸(T-NO_3), NH_4^+にも高濃度現象がみられ, 中でもSO_4^<2->が20μg/m^3にも達した。このときの陰イオン総量と陽イオン総量の差から酸性粒子(H_2SO_4やHSO_4^-)が多量に存在したと考えられる。SO_4^<2->やT-NO_3の高濃度時にはSO_2のSO_4^<2->への変換割合(Fs)も高く, 反応により生成した二次汚染物質が輸送されたと考えられる。1994年3月におけるオゾン濃度レベルは10月や11月に比べ高く, その多くは40〜55ppbの範囲にあり, 春季に高くなるオゾン濃度のバックグランド変動を反映していた。SO_2,SO_4^<2->, T-NO_3濃度も10月と11月の高濃度現象時のレベルまたはそれ以上になることがあり, また, Ca^<2+>濃度も高くなる特徴などから, 大陸から大気汚染物質や黄砂が長距離輸送されたと考えられる。大気汚染物質の高濃度現象におけるバックトラジェクトリーの解析結果より, 大都市や工場地帯を通過してきたと考えられる気塊中にはSO_4^<2->とT-NO_3が多量に存在し, これらの酸性成分とほぼ同当量のNH_4^+とCa^<2+>のアルカリ成分が存在した。これに対し, 火山噴煙の影響を受けたと考えられる気塊はSO_2やSO_4^<2->濃度が高く, T-NO_3は低濃度であった。また, SO_4^<2->を中和するためのアルカリ成分が少なく, 多量の酸性粒子が存在したと考えられる。
- 社団法人大気環境学会の論文
- 1999-05-10
著者
-
鹿角 孝男
長野県衛生公害研究所
-
村野 健太郎
国立環境研究所
-
畠山 史郎
国立環境研究所
-
向井 人史
国立環境研究所
-
植田 洋匡
京都大学防災研究所
-
薩摩林 光
長野県衛生公害研究所
-
佐々木 一敏
長野県環境保全研究所
-
鹿角 孝男
長野県環境保全研究所
-
西沢 宏
長野県衛生公害研究所
-
向井 人史
国立環境研
-
佐々木 一敏
長野県衛生公害研究所
-
鹿野 正明
長野県衛生公害研究所
-
太田 宗康
長野県衛生公害研究所
-
村野 健太郎
国立環境研
-
西澤 宏
長野県衛生公害研究所
-
薩摩 林光
長野県環境保全研究所
-
畠山 史郎
国立環境研
-
村野 健太郎
法政大学大学院工学研究科
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