ゴキブリ類に対するグリセロール及び関連物質の摂食行動誘起作用
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概要
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糖の一部や糖アルコールの一部がゴキブリの摂食行動を起させることはすでに報告した(辻1965, 辻・大野1969).今回はより単純な多価アルコール其他の作用を検討し, これらの化合物が有効であるための条件について若干考察した.I.前報及び今回のワモンゴキブリ, クロゴキブリ, チャバネゴキブリを用いた濾紙法による結果から次のことがいえよう.1)グリセロールは極めて有効である.2)この強力な作用のためにはグリセロールのもつ3個の水酸基の全部が必要である.グライコール類は無効であり, 単純な飽和脂肪酸のα-モノグリセライドもモノアセチンがごくわずかの作用を示す以外は全く無効であつた.3)グリセロールのように隣接した3個又はそれ以上の炭素に夫々1個の水酸基をもつ化合物(特に糖アルコール)には有効なものが多いが, それらの立体異性体(特に糖で)で無効なものも多い(但しチャバネゴキブリに対しては他種に対してより無効のものが多い).4)従つて水酸基の数ばかりでなく, その立体的な配置及び化合物全体の形態も又重要な条件と思われる.5)一方, テストしたアルドース(5及び6炭糖)のうちで, C_2C_3C_4に於ける立体配置の等しいL-アラビノース, D-ガラクトースだけが3種又は1種(クロゴキブリ)のゴキブリに極めて有効で他の異性体が無効か少効であること : L-アラビノースのC_2C_3C_4に於けると同様の立体配置はアルドースよりもそれらに対応する糖アルコールで末端のメチロールの回転によって成立しやすく多くの糖アルコールは有効であり, 他方多くのアルドースは無効であること : L-アラビノースのC_2C_3C_4と同様の配置がソルビトールのC_6C_5C_4及びC_3C_2C_1に連続かつそれぞれ独立に成立し, この化合物がゴキブリ3種に対して糖アルコール中で, ずばぬけた効果を示すこと : 又上記と同様の配置をグリセロールが容易にとり得ること : の諸事実は極めて暗示的である.6)あるいは, ゴキブリ3種に於いてグリセロールを感受するレセプターはその分子レベルでこれらの有効化合物に対して共通であり.L-アラビノースのC_2C_3C_4の立体配置に対応した構造の連続によつて構成されているかも知れない.7)よく知られた油脂成分であるオレイン酸其他のグリセライドも若干有効であるが, この場合ゴキブリはむしろ特定のアシル基に反応していると考えられる.II.チャバネゴキブリを用いた実用的なベイトによる試験結果によれば, グリセロールは今まで知られた最も強い効果をもつ2糖類のマルトース以上に強力な効果を示した.
- 1970-11-30
著者
-
辻 英明
Agricultural Chemicals Research Laboratories, Sankyo Co., Ltd.
-
大野 茂紀
Agricultural Chemicals Research Laboratories, Sankyo Co., Ltd.
-
辻 英明
環境生物研
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